役者もプロデューサーもパートナー
SYO:今のお話には、キャストのことも付随してくると思います。大作映画にしか出演しないという役者さんは、最近はかなり減ってきているのではないでしょうか。特に若い世代は、面白いと思ったら規模感を問わずに出演するようになってきている。それこそ藤井さんの作品に出演された綾野剛さんは、そういったスタンスですよね。
藤井:そうですね、脚本が面白かったら出演してくれるという役者さんは、すごく沢山いると思います。俳優部という映画における一部署で、一つの組の中でモノを作るというのが、綾野さんたちは心地いいのだろうなと思います。初めましての関係でやる良さもあるけど、決まった組で一緒にやる良さというのもありますよね。
僕自身も作品が終わった後に、プロデューサーから「次何やる?」とよく聞かれるんですよ。お互いが同じことをやりたくない、だから次は違うものをやろうとなる。スターサンズの河村光庸さんには、「次はこれやろう!」とよく言われますね。プロデューサーもパートナーだし俳優もパートナー、最近はそういう風に思って映画を作っています。ポン・ジュノとソン・ガンホの関係ではないですが、そうやってコンビでやっていることに、昔から羨ましさを感じます。
また、僕も作家性というのは全く無いと思っていますね、相手が決めてくれることだし。プロデューサーの方々も、僕らがやりたいことを潰そうとしてオファーをしてくるわけではないと思うんです。化学反応を楽しんでやってくれる人なのかを僕たちも見極めて、肯定的にその企画に取り組めるように意識しています。自分はのびのびやらせてもらっている方だと思います。
SYO:脚本の面白さで決めるという話でいうと、『ミッドナイトスワン』の草なぎ剛さんもそうですよね。
内田:そうですね、そういう方は増えていると思います。役者さん自身が判断できる立ち位置に自分を持っていっている。脚本って事務所で止まっていることもあるので、役者自身が「脚本を読ませてくれ」と言わないと、読ませてもらえない場合もある。芸能人であるべきか役者であるべきか、日本だと曖昧なので大変じゃないですかね。やはり役者でありたいと願う役者が、若手を中心にすごく増えていると思います。
先ほど行定さんがおっしゃった概念の話ですが、メジャー映画の製作者って悪そうなやつが沢山いたり、文化を殺すようなタイプがいそうなイメージを持ってる人がいるかもしれませんが、全然そんなことないんですよ。映画が大好きな人や超クリエイティブな人たちが、下手したらインディー業界より全然いるんです。その人たちは力があるので、彼らが一斉に独創的な方へ向かったら、日本映画は一気に上昇気流に乗ると思うんですけどね。
役者も一緒だと思います。変わってきてはいるけど、もうワンプッシュ何かが足りないのかもしれない。芸能界というのは、ものすごく強い力を持っているので、我らのちっぽけな力だけでは、なかなか難しいですよね。
香田:最近のNetflixなどの配信には、ビッグネームな役者の方々も自分の意志で判断して、出演されている状況だったりしますよね。その辺は予算規模も関係しているのでしょうか。
藤井:予算第一じゃない感じはあります。例えばNetflixだとしたら、一番大事にしているのは脚本なんですよ。脚本がまず第一で、次にクリエイターやチーム、その中に俳優部がいる。まずは面白い脚本をしっかり作ろうと、書き手の人たちに時間と場所を与えてくれる。もちろんそれは予算があるからかもしれません。そういう状況はとても嬉しいですね。