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変化を迫られる日本映画 映画はこうして作られる! 〜メジャー映画と作家性〜 イベントレポート Vol.2(全3回)【CINEMORE ACADEMY Vol.20】

変化を迫られる日本映画 映画はこうして作られる! 〜メジャー映画と作家性〜 イベントレポート Vol.2(全3回)【CINEMORE ACADEMY Vol.20】

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変化を迫られる日本映画



SYO:監督同士で勉強会をやっていると聞いたことがありますが、実際にどういうことをされてるのでしょうか。


藤井:それこそ内田さんと雑談ベースで話すことも、ある種の勉強会だと思っています。衝撃的だったのは、ドイツで行定さんと初めてお会いした時に、初対面なのに会って5分で「こういう面白い企画があるんだ」「こういうストーリーがあってね」とずっと話してくれる。そういうこと1つ1つが勉強会になっていますね。定期的に集まれることはなかなかないですが、本広さんにも呼んでいただいたりして「今後どうしていこうか」と話してもらったりしています。


自ら取りに行かないと知らない情報も多いですし、経験しないと分からないこともあるので、先輩方から教えてもらうことはすごく多いです。定期的にそういう事をやったほうがいいと思いますね。


内田:映画全体の事に関して言うと、日本は情報が遅れているんです。行定さんは国内で映画を撮っているだけじゃなくて、海外の映画祭にも行くし、日本で映画祭もやっているから情報網としてはすごく広い。だから行定さんの中国の映画話とかはものすごく面白いです。僕らは遅れているんですよ。そういう情報は日本になかなか入ってこない。お金に関しての話や契約についての話もそうだし、演技に関しても外国はどんどん進歩しているけど、日本は1970年代のままずっと止まっている。そういった状態から脱するには、そういう勉強会や映画祭というのは絶対的に必要だと思います。


行定:日本映画のシステムは、5~60年代の往年の日本映画の上に胡座をかいたままだったんです。今回コロナ禍で、フリーランスで仕事をするということが、いかに大変なのかがかなり露呈しました。かつての映画会社の社員と同じようにフリーランスの人たちを扱うのは、やっぱりバランスが取れないですよね。


映画の作り方も、インディペンデントとメジャーで完全に分断されました。さっきも言ったように、僕らは体力も知力も時間も無限に使いたい。それで良いものを作ろうとしたのが90年代のインディペンデントブームの監督たちで、僕らはその下にいた。メジャー映画と切り結ぶことを先輩たちがそこでしてくれた。その人達に憧れた我々が繋いでいき、2000年代に僕らはデビューしたんです。


岩井俊二監督は僕の師匠でもあるのですが、彼が「若い頃、散々日本映画で暴れさせてもらった。そしたら日本映画は瓦礫のようになっていた。」「ゴジラが瓦礫にしたあとに、ゴジラ自らもう一回作るのはおかしい、誰かが代わりにもう一回街を作ってくれないか」と言うんです。そんな時、僕が『GO』という映画を撮ったのですが、岩井監督は「自分は好きなことをして、日本映画という街をぐちゃぐちゃにしちゃったけど、気づいたら行定がまたそこに1つ街を建ててくれたね」と感想を言ってくれました。


前の世代の人達が、破茶滅茶に多様性のある日本映画の面白さをアジアに拡げていなかったら、日本映画はもっと早く駄目になっていたのだろうと思います。だからスタッフも含めて、日本映画は変わらなきゃいけないのは確かなんです。


さっき内田くんが言ったように、映画会社に有能なプロデューサーはいるんですよ、その人達もマインドシフトしていけばまだまだいける。今は脆弱だからこそ、突出したやつが出てくれば、すぐに上にあがって来ますから。そういう人たちが引っ張っていく。そういう連中が出てきたら映画監督はみんな応援しますからね。


今、日本映画は世界から見ても魅力的に見られていない。海外の映画祭にも呼ばれることが軒並み減っています。それは冒険していないからです。



Vol.3へ続く

※Vol.1はこちらから



【ゲストプロフィール】50音順/敬称略




映画監督:内田英治

ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。週刊プレイボーイ記者を経て99年「教習所物語」(TBS)で脚本家デビュー。14年「グレイトフルデッド」はゆうばり国際ファンタスティック映画祭、ブリュッセル・ファンタスティック映画祭(ベルギー)など多くの主要映画祭で評価され、つづく16年「下衆の愛」はテアトル新宿でスマッシュヒットを記録。東京国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭(オランダ)をはじめ、世界30以上の映画祭にて上映。イギリス、ドイツ、香港、シンガポールなどで配給もされた。近年はNETFLIX「全裸監督」の脚本・監督を手がけた。最新作『ミッドナイトスワン』は日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。





映画監督:藤井道人(ふじい・みちひと)

1986 年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。大学卒業後、2010 年に映像集団「BABEL LABEL」を設立。伊坂幸太郎原作『オー!ファーザー』(2014年)でデビュー。 以降『青の帰り道』(18年)、『デイアンドナイト』(19年)、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20年)、『ヤクザと家族 The Family』(21年)、など精力的に作品を発表しており、今後も待機作を多く控える。2019年に公開された映画『新聞記者』では、第43回日本アカデミー賞で最優秀作品賞含む6部門受賞、他にも映画賞を多数受賞。今最も注目されている映像作家の1人である。





映画監督・演出家:本広克行

1965年生まれ。香川県出身。1996年に初の映画監督作品『7月7日、晴れ』で劇場デビュー。2003年に公開された映画『踊る大捜査線 THEMOVIE2レインボーブリッジを封鎖せよ!』では、日本映画(実写)興行収入記録歴代一位の座を獲得。2015年公開の映画『幕が上がる』(平田オリザ原作・ももいろクローバーZ 主演)では、舞台版の演出も担当。舞台最近作は「舞台 PSYCHO-PASS サイコパス VirtueandVice」他。HTB開局50周年ドラマ『チャンネルはそのまま!』では2019年日本民間放送連盟賞のテレビ部門で“グランプリ“を受賞。最近作は映画『亜人』(2017年)、『ビューティフルドリーマー』(2020年)『ブレイブ‐群青戦記‐』(2021年)など。





映画監督:行定勲

1968年生まれ・熊本県出身。2000年長編映画初監督作品『ひまわり』で釜山国際映画祭国際批評家連盟賞受賞、2001年『GO』で第25回日本アカデミー賞最優秀監督賞をはじめ数々の賞に輝き、一躍脚光を浴びる。2004年『世界の中心で、愛をさけぶ』を公開、興行収入85億円の大ヒットを記録し社会現象となった。以降、『北の零年』(05)、『春の雪』(05)、『クローズド・ノート』(07)、『今度は愛妻家』(10)、『パレード』(10/第60回ベルリン国際映画祭パノラマ部門・国際批評家連盟賞受賞)、『円卓』(14)、日中合同作品『真夜中の五分前』(14)、『ピンクとグレー』(16)、故郷熊本を舞台に撮影した『うつくしいひと』(16)、日活ロマンポルノリブート『ジムノペティに乱れる』(16)、『うつくしいひと、サバ?』(17)、『ナラタージュ』(17)など。2018年『リバーズ・エッジ』が第68回ベルリン国際映画祭パノラマ部門オープニング作品として公開され、同映画祭にて国際批評家連盟賞を受賞。昨年は、『劇場』(20)と『窮鼠はチーズの夢を見る』(20)が公開。また映画だけでなく、舞台「趣味の部屋」(13、15)、「ブエノスアイレス午前零時」(14)、「タンゴ・冬の終わりに」(15)などの舞台演出も手掛け、その功績が認められ2016年毎日芸術賞 演劇部門寄託賞の第18回千田是也賞を受賞。今後は、パルコ・プロデュースの舞台「リボルバー〜誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?〜」の演出(7/10-8/1 PARCO劇場、8/6-8/15 東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール)など。



【MCプロフィール】敬称略




映画ライター:SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema



CINEMORE編集長:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。



取材・文:山下鎮寛

1990年生まれ。映画イベントに出没するメモ魔です。本業ではIT企業を経営しています。

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