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日本映画が生き残るためには 映画はこうして作られる! 〜メジャー映画と作家性〜イベントレポート Vol.3(全3回)【CINEMORE ACADEMY Vol.21】

日本映画が生き残るためには 映画はこうして作られる! 〜メジャー映画と作家性〜イベントレポート Vol.3(全3回)【CINEMORE ACADEMY Vol.21】

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映画館で映画を観るということ



SYO:確かに、映画館という文化が消える可能性があることをすごく感じましたね。作り手の方々は僕ら以上にずっと前から感じていたかもしれませんが、僕ら観る側も今回は感じてしまいました。


内田:アメリカの、(悪い言い方をすると)劇場を裏切った映画会社のニュースを聞くと確かにそう思いますよね。劇場が儲からなくなれば、普通に閉館するしかないですからね。実際ハリウッドメジャーの最大手、劇場での上映契約を破棄しているわけですから。


行定:そういう意味では映画祭ってすごく貴重な状況になっています。数年前にヨーロッパの映画祭に行った時に、ほとんどのアート映画は一般に公開してもお客さんが入らないから、世界中の映画祭でプレミア上映して、ちゃんと映画として実証をした後に、ストレートでブルーレイになると聞きました。


映画祭の意義というのは、映画という一つの存在をきっちり主張していくことです。未だにカンヌが、Netflixを規定として通さないことにしているのは、マインドとして分かる気がするんですよね。映画は映画館で観るものだということに気づいただけでも、僕はポジティブにとっているんです。そういう意味では、誰がその価値を認識できるかがすごく重要で、それは観客にかかっています。僕ら作り手もそれを伝えていかないといけない。


僕らは、映画の音をつくるとき、スクリーンに映し出して音を作っているんです。それはテレビ画面で視聴する体験とは全く違うものですから。映画館で観たほうが絶対にいいんです。


香田:なるほど。今の話はものすごく腑に落ちました。作っているのは音だから、画はテレビで確認できれば良い。ということでは決してなく、わざわざ大きいスクリーンに映して音を作っている。それが前提ということですよね。


SYO:映画が持つ本来のポテンシャルは、やっぱり劇場の中でないと伝わらないということですね。


香田:最後に各監督の皆さんに、最新の告知をお願いします。


内田:WOWOWでやっている『向こうの果て』という、他人の原作脚本でやった作品が最終回を迎えます(wowowオンデマンドで配信中)。『ミッドナイトスワン』もまだ公開しているので是非観ていただきたいです。あと夏に撮影する阿部寛さん主演の新作『異動辞令は音楽隊』についても情報解禁されたので、気にしておいていただけると嬉しいです。


藤井:現在公開中の映画はないのですが『ヤクザと家族』が配信で観られるようになって、世界の色んな人たちから感想をもらっています。もしまだ観ていない方がいらっしゃったら、ぜひ観ていただきたいです。また、ABEMAで『箱庭のレミング』というドラマを作りました。10代の人たちに向けて映画のクルーでドラマを作ったらどう観てもらえるのだろうと、真剣に挑戦している作品です。是非ご覧ください。


本広:最近は舞台が多いのですが、今オンラインサロンをやっていて、そこで映画好きな人たちや、映画に出たい若者が集まって『アクトレスモンタージュ』(監督:水口紋蔵)という作品を作っています。これが結構面白いんですよ。めちゃくちゃ自由度があって、役者の縛りとかもなく、とにかく自主映画を作ろうという感じなんです。脚本はプロにお願いしたのですが、今一番ワクワクして携わっている作品です。


行定:8月にクランクインする僕の初プロデュース映画を、今は準備しています。あとは舞台演出をやっていまして、パルコ劇場で『リボルバー』というタイトルのゴッホとゴーギャンの物語が上演されます。原作の原田マハさん自らが、初の舞台戯曲を手掛けられた作品です。(※『リボルバー~誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?』~東京公演:2021年7月10日(土) ~ 2021年8月1日(日)大阪公演:2021年8月6日(金) ~ 2021年8月15日(日))


香田:皆さん、多くの作品を生み出し続けているので、一観客としてぜひ楽しませていただきたいと思います。


また、今日は大変興味深いお話をたくさん聞かせていただきました。お忙しいところご参加いただき、どうもありがとうございました。



イベント第二弾も8/31(火)19:00開催決定! 詳しくはこちら

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【ゲストプロフィール】50音順/敬称略




映画監督:内田英治

ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。週刊プレイボーイ記者を経て99年「教習所物語」(TBS)で脚本家デビュー。14年「グレイトフルデッド」はゆうばり国際ファンタスティック映画祭、ブリュッセル・ファンタスティック映画祭(ベルギー)など多くの主要映画祭で評価され、つづく16年「下衆の愛」はテアトル新宿でスマッシュヒットを記録。東京国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭(オランダ)をはじめ、世界30以上の映画祭にて上映。イギリス、ドイツ、香港、シンガポールなどで配給もされた。近年はNETFLIX「全裸監督」の脚本・監督を手がけた。最新作『ミッドナイトスワン』は日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。





映画監督:藤井道人(ふじい・みちひと)

1986 年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。大学卒業後、2010 年に映像集団「BABEL LABEL」を設立。伊坂幸太郎原作『オー!ファーザー』(2014年)でデビュー。 以降『青の帰り道』(18年)、『デイアンドナイト』(19年)、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20年)、『ヤクザと家族 The Family』(21年)、など精力的に作品を発表しており、今後も待機作を多く控える。2019年に公開された映画『新聞記者』では、第43回日本アカデミー賞で最優秀作品賞含む6部門受賞、他にも映画賞を多数受賞。今最も注目されている映像作家の1人である。





映画監督・演出家:本広克行

1965年生まれ。香川県出身。1996年に初の映画監督作品『7月7日、晴れ』で劇場デビュー。2003年に公開された映画『踊る大捜査線 THEMOVIE2レインボーブリッジを封鎖せよ!』では、日本映画(実写)興行収入記録歴代一位の座を獲得。2015年公開の映画『幕が上がる』(平田オリザ原作・ももいろクローバーZ 主演)では、舞台版の演出も担当。舞台最近作は「舞台 PSYCHO-PASS サイコパス VirtueandVice」他。HTB開局50周年ドラマ『チャンネルはそのまま!』では2019年日本民間放送連盟賞のテレビ部門で“グランプリ“を受賞。最近作は映画『亜人』(2017年)、『ビューティフルドリーマー』(2020年)『ブレイブ‐群青戦記‐』(2021年)など。





映画監督:行定勲

1968年生まれ・熊本県出身。2000年長編映画初監督作品『ひまわり』で釜山国際映画祭国際批評家連盟賞受賞、2001年『GO』で第25回日本アカデミー賞最優秀監督賞をはじめ数々の賞に輝き、一躍脚光を浴びる。2004年『世界の中心で、愛をさけぶ』を公開、興行収入85億円の大ヒットを記録し社会現象となった。以降、『北の零年』(05)、『春の雪』(05)、『クローズド・ノート』(07)、『今度は愛妻家』(10)、『パレード』(10/第60回ベルリン国際映画祭パノラマ部門・国際批評家連盟賞受賞)、『円卓』(14)、日中合同作品『真夜中の五分前』(14)、『ピンクとグレー』(16)、故郷熊本を舞台に撮影した『うつくしいひと』(16)、日活ロマンポルノリブート『ジムノペティに乱れる』(16)、『うつくしいひと、サバ?』(17)、『ナラタージュ』(17)など。2018年『リバーズ・エッジ』が第68回ベルリン国際映画祭パノラマ部門オープニング作品として公開され、同映画祭にて国際批評家連盟賞を受賞。昨年は、『劇場』(20)と『窮鼠はチーズの夢を見る』(20)が公開。また映画だけでなく、舞台「趣味の部屋」(13、15)、「ブエノスアイレス午前零時」(14)、「タンゴ・冬の終わりに」(15)などの舞台演出も手掛け、その功績が認められ2016年毎日芸術賞 演劇部門寄託賞の第18回千田是也賞を受賞。今後は、パルコ・プロデュースの舞台「リボルバー〜誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?〜」の演出(7/10-8/1 PARCO劇場、8/6-8/15 東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール)など。



【MCプロフィール】敬称略




映画ライター:SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「 syocinema



CINEMORE編集長:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。



取材・文:山下鎮寛

1990年生まれ。映画イベントに出没するメモ魔です。本業ではIT企業を経営しています。

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