大友花恋と浜崎あゆみ
Q:『ゼンタイ』の時は、まだ一線で活躍されてない役者さんたちのみで撮られていたと思いますが、今回の場合は、メインとなる役は名前の売れているプロの役者さんが演じていて、いわゆるプロアマ混合チームのような状態となっています。その辺はいかがでしたか。
橋口:そうですよね。売れっ子の方たちと、事務所にも入っていないような全くの無名の方々が一緒にやるわけですから、いくら彼らのキャラクターを知っているとはいえ、若干心配はありました。現場で苦労したところもありましたが、最終的には皆よくやってくれましたね。
また、普段だったら、深夜ドラマに出てもらうのは難しいような方々が、快く出演してくださったことも、とてもありがたかったです。
Q:事前にリハーサルなどは行われたのでしょうか。
橋口:「心の容れ物」はやっていませんが、「鍋の中」は集団会話劇の要素が大きくて心配だったので、事前にリハーサルをやりました。やりましたが…、あ、これは大失敗したかもしれないと、最初はゾッとしましたね(苦笑)。
特に大友花恋ちゃんが演じた役は、「あの子、計算しているよね」と言われて同性から嫌われるような感じの女の子なのですが、それを「嫌な女だな」とは映らずに「この子どこまで計算なの?」「どこまで天然なの?」「でも絶対計算だよね?」と見せて欲しくて。そして、そこに抗おうとする周りの者たちが敗北していく感じを、何とか面白くできないかなと思っていたのですが…、リハーサルを見ている限りでは「ちょっと難しかったかな」と。でも後日、現場に来た花恋ちゃんは、役にピタッと焦点を合わせていましたね。さすがプロとしてやっているだけのことはあるなと思いました。
『初情事まであと1時間』©「初情事まであと1時間」製作委員会
花恋ちゃんは、昔『渚のシンドバッド』(95)に出てもらった、 浜崎あゆみに近い感じがしましたね。花恋ちゃんは20歳ですけど、当時の浜崎あゆみはまだ17歳でした。最初は「サンミュージックのアイドルでーす」みたいな感じだったのですが、現場で親しくなって本人に踏み込んでいくと、最初に会った時のアイドルのイメージとは全く違う。ナイーヴで繊細で、そして強いものをもっていて、「すごいな」と感じたものです。あの時の感覚と近いものを、花恋ちゃんにも感じましたね。
細田くんなんかも本当にまだまだ染まってなくて、真っ直ぐな好青年でした。細田くんと花恋ちゃんのキスシーンを撮ったときに、僕としてはもうワントライしたかったのですが、「もう一回」と言えなかったんです。二人があまりに初々しいので、何だか申し訳なくて…(笑)。
Q:細田さんは、『町田くんの世界』(19)のときから比べると、大きくなったなぁと思ってしまいました。
橋口:細田くんはこれから大スターになると思いますよ。素直で一生懸命で、一緒にやっていてすごく気持ちよかったですね。