不思議だった二人の距離感
Q:撮影現場では、お互いや周囲との距離感はどんな感じだったのでしょうか。
青木:二人の距離感は何か不思議でした。
石川:私も不思議だった。不思議だったけど一緒にいて過ごしやすかったですね。磯辺の部屋のシーンでは、周りがセッティングしている間は、二人ともそのまま放っておかれたんです。だから二人で、普通に漫画を読んだりしてくつろいでいました。
青木:僕はもう、人を駄目にするクッションでずっと駄目になってました(笑)。
石川:オレンジのクッションがあったよね。映画にも出てますね。
『うみべの女の子』©浅野いにお/太田出版・2021『うみべの女の子』製作委員会
青木:他のキャストとの関係性でいうと、なんだか絶妙な距離感があった気がしますね。倉悠貴君が演じた金髪の三崎軍団が、仲良くなり過ぎているんですよ。僕と三崎軍団は同じ控室だったのですが、僕一人のシーン、三崎軍団のシーンと交互に撮影があると、撮影があるたびに、三崎軍団がどんどん仲良くなってるんです。それが何だかうらやましくもあり、ちょっとその仲の良さに、イライラしてしまいました。でも磯辺としては、イライラする感情が正解なんだろうなと。
Q:なるほど、リアルな関係性が演技に影響を及ぼしていると。
青木:そうなんです。磯辺の感情を作るために、仲の良さを見せつけてくれて、ありがとうございますって感じですね。今となっては感謝してます(笑)。
Q:部屋の話が出ましたが、今回の磯辺の部屋は、ターニングポイントとなるような色んなことが起こる場所でもあります。撮影はまとめて行われたのでしょうか。
石川:はい。ほぼまとめての撮影でした。
青木:ギュッとまとめて撮ったので、身体的にかなり疲弊しました。
石川:疲弊したよね。あの空間は磯辺としてもつらい場所だから、柚くんは私より疲弊したんじゃないかな。
青木:確かにそうかも。あの部屋は、美術さんが家を改造して作ってくださったのですが、まるで磯辺の兄の温度がこびりついているようで(*)、閉鎖的なんだけど、磯辺にとっては心のよりどころになるような、独特な空間になっていました。そのおかげで、僕はそこにいるだけで磯辺になれた気がします。そういう周りのサポートにもずいぶん助けられました。(*磯辺と亡くなった兄との兄弟部屋の設定)