小梅と磯辺として、そこにいた
Q:撮影当時、石川さんは22歳、青木さんは19歳だったそうですが、劇中のお二人は中学生にしか見えません。外見だけではなく、心情や醸し出す幼い空気も含めて、完全に中学生になっていたと思います。役の作り込みは苦労されたのではないでしょうか。
石川:クラスの同級生たちのほとんどは、実際の現役中学生が演じていたんです。その子たちが私を年上の大人として扱わず、同等でいてくれたのが大きかったですね。
青木:周りに本物がいたからね。
石川:そう。本物の中学生に囲まれて、本物たちが同じ目線で会話してくれたから、自分が大人でいる必要がなかったし、そこに入り込んでいけたんだと思います。
Q:教室のシーンでも全く違和感なく馴染んでいましたよね。青木さんはいかがでしたか。
青木:中学生だからといって声色を変えたりとか、そういう表面的なことはしませんでした。磯辺の精神的な面にフォーカスを当てて、とにかく磯辺として“いる”ことに徹しようとしました。磯辺って、中学生だけどちょっと達観していて、でもどこか勘違いもしている。そういったところを意識しましたね。あ、あと、とりあえずスネ毛は剃りました。
『うみべの女の子』青木柚
Q:確かに、短パンのシーンは多かったですね。
青木:そうなんです。だからツルツルでした(笑)。
Q:中学生だけど、どこか大人な部分が顔を出すという、そこのバランスは非常に難しそうです。大人になろうとする空気を出しながらも、幼い部分も同居させる必要がある。その辺はいかがでしたか。
石川:磯辺は確かにそうなのですが、小梅は全然大人な部分がなくて、むしろほんとに子どもっぽくて、わがままで身勝手な子なんです。ただ、私自身は小梅よりは大人なので、小梅を理解できる部分を持ってしまっている。でも理解した上で演じてしまうと、それはもはや小梅ではないのかなと…。そういう葛藤は常に抱えていましたね。
Q:小梅としてそこにいた。ということでしょうか。
石川:そうですね。映画の中で小梅が葛藤していたことは、演技というよりも私自身の中でリアルに葛藤していたことかもしれません。今回の撮影では、うまくオン・オフが出来なかったかもしれないですね。
青木:瑠華ちゃんと監督が、現場で話し合っている姿を何度も見ていましたし、瑠華ちゃんは人一倍小梅への思いが強くて、小梅への思いが溢れ出ていましたね。