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テレビドラマ/CM出身からみた映画業界とは 〜メディアを超える映画監督〜 大根仁×吉田大八イベントレポート Vol.1(全2回)【CINEMORE ACADEMY Vol.22】

テレビドラマ/CM出身からみた映画業界とは 〜メディアを超える映画監督〜 大根仁×吉田大八イベントレポート Vol.1(全2回)【CINEMORE ACADEMY Vol.22】

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テレビドラマ/CM出身からみた映画業界



Q:お二人ともそれぞれ違う映像業界から映画界に監督として進出されるわけですが、実際に映画を制作してみて感じたことや、それまでいた業界との違いなどはありましたか?


大根:30歳を過ぎてから、深夜ドラマをメインとしたテレビドラマを10年ぐらいやっていました。そんな中、テレ東の深夜ドラマでやっていた「モテキ」を映画化するという形で、映画監督デビューしたんです。


テレビディレクター出身の映画監督というのは結構いるんですけど、そういう人たちが映画的評価をされない事がずっと引っかかっていて、一体なぜだろうという分析は自分の中でしていました。テレビディレクターって、ミュージシャンで言えば、どっかスタジオミュージシャン的な印象があるんですよね。雇われ監督というか。だからそういった部分でテレビディレクターが映画を撮っても、いまいち評論家筋から評価されなかったり、賞に絡まなかったりする。それらに見合う作品をいっぱい撮ってはいるのに、なぜだろうといつも考えていましたね。


一つは脚本+監督というのがすごく重要なんじゃないかと。自分が映画を撮るときは、企画はもちろん、脚本と監督どちらもやりたいと思っていました。そういった意味では『モテキ』は両方できたので、非常にラッキーな流れでしたね。


吉田:テレビドラマのときから、自分で脚本を書くことが多かったんですか。


大根:そうですね。「モテキ」は2010年だったのですが、2007年ぐらいから自分で脚本を直したりしていました。そのうち自分で書いた方が早いなと思って、一から脚本を書くようになったんです。これは深夜ドラマだからこそ出来たんだと思います。


ゴールデンのドラマはプロデューサーがいて、脚本家がいて、複数人の演出家が撮る。予算とスケジュールを守って職人的に現場をまわす事が主な仕事ですね。一方で、深夜ドラマはもう少しユルい。予算も時間も人も少ないんですけど、その分自由度がある。そこで全話演出して、自分で脚本も書くようになったのは大きいですね。


吉田:「モテキ」は全部自分で脚本を書いたんですか。


大根:「モテキ」は全部自分で書きました。もちろん原作はありますけどね。


吉田:演出と並行して、時間的に成り立つものですか。


大根:ゴールデンのドラマだと放送と現場と編集が追いかけっこなので、ディレクター数人でのシフト制になったりするんですが、自分が撮る場合は「何ヶ月前からやらせてください」という風に最初からお願いしています。だから撮り終わる頃に放送が始まるんですよね。


吉田:なるほど、そういったスケジュールの自由度も深夜ドラマのほうがあるんですね。


大根:そうやって入った映画業界に対する印象は、上品な言い方をすると非常にコンサバティブな部分がある業界、要するに古臭い慣習が結構残っているんだなと。また一方で、やはりテレビとは違って映画は現金商売というか、当てなきゃ話にならないというギャンブル的要素がすごくあるのが面白いなと思いました。


あと映画はテレビとか他のメディアより宣伝という部分に力を入れますね。最近は宣伝費が下がっていますが、僕が撮り始めた頃は製作費と同じぐらい宣伝費があったんですよ。作る事と当てる事の比重が予算的に一緒だというのは、すごいなと思いましたね。


Q:映画の『モテキ』自体は古臭い感じが一切せず、むしろ今まで全く見たことがないくらい新しく感じたのですが、それでも古い慣習の中での制作だったんですね。


大根:映画界のベテランスタッフには素晴らしい方たくさんいらっしゃいますが、自分が撮るときは、フレッシュなスタッフでやりたいですね。あと師匠や先輩方の仕事を見ている中で、意外と一番コンサバティブに感じたのは、編集と音の仕上げはすごく不自由だなと思いました。そこは完全に職域が分かれている。僕は編集の段階でもある程度の音をつけておかないと、自分のリズムが作れなかったので、自身のやり方として、そうやらせてくださいと主張しました。編集も、映画のプロの編集マンではなくて、自分のアシスタントと一緒にやったり、映画の編集経験はないけどライブビデオの編集が得意なディレクターと組んだりしています。編集をプロの編集マンにお願いしないというのは一貫してますね。


吉田さんは映画を撮る時に、いわゆる職人気質というか経験豊富なスタッフの方と一緒になることが多いですよね。


吉田:自分はあまり映画のスタッフ、CMのスタッフという区別がよく分かっていないかもしれないです。もちろん映画では長い時間を一緒に過ごすので、1人1人の個性をより強く感じることは多いですが。むしろ、スタッフから見える監督という立場が根本的に違う気はします。


CMのときはクライアントがいて、広告代理店がいての、ディレクターという職分じゃないですか。映画の監督はもっと責任の範囲が大きい分、同じスタッフでも映画とCMでは接し方含め当然変わってきちゃう。


大根:全員が全員ではないですけど、映画のプロデューサーはやっぱり「作るのは監督、あてるのは我々」っていう感じですね。「映画そのものは監督のものですよ」ということをすごく言ってくれます。





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