1. CINEMORE(シネモア)
  2. CINEMORE ACADEMY
  3. テレビドラマ/CM出身からみた映画業界とは 〜メディアを超える映画監督〜 大根仁×吉田大八イベントレポート Vol.1(全2回)【CINEMORE ACADEMY Vol.22】
テレビドラマ/CM出身からみた映画業界とは 〜メディアを超える映画監督〜 大根仁×吉田大八イベントレポート Vol.1(全2回)【CINEMORE ACADEMY Vol.22】

テレビドラマ/CM出身からみた映画業界とは 〜メディアを超える映画監督〜 大根仁×吉田大八イベントレポート Vol.1(全2回)【CINEMORE ACADEMY Vol.22】

PAGES


フィルムとデジタルとの違いとは



Q:ちょっとここから技術的な話になっていくのですが、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』は2007年、『モテキ』は2011年と、映画撮影がフィルムからデジタルへほとんど移行しつつあった時期に、お二人とも映画監督デビューされていますが、その変革期の影響は多少なりともあったのではないでしょうか? また、「フィルム」を使っての映画撮影に対して願望はありますか?


大根:吉田さんが映画を撮る前にCMを撮っていた時は、まだフィルムでしたか?


吉田:今はデジタルが多いですが、1作目の『腑抜けども〜』を撮っている頃は、CMはほとんどフィルムで撮っていましたね。2007年頃はちょうどフィルムとデジタルの端境期だったと思います。『腑抜けども〜』もフィルムで撮りたかったんですが、予算やスケジュールなどの都合でデジタルでした。3本目の『パーマネント野ばら』(10)だけフィルムです。大根さんはフィルムで撮られたことはありますか?


大根:僕は1回もやってないです。この間、V6のMVでほぼ初めて35mmでやりました。


吉田:どうでしたか。


大根:めちゃくちゃよかったです(笑)。デジタルとは画が全然違う。音楽で言うとCDとレコードくらい違うというか、豊潤なんですよね。


吉田:自分はもう違いが分からなくなってきて、でもたまにフィルムを見るとやっぱりいなと思う、その繰り返しです。今は、カメラマンがやりたいと言えば応援するようにしていますね。


大根:作品のテイストにもよりますよね。クリストファー・ノーランやスティーヴン・スピルバーグはずっとフィルムですけど、「これデジタルで撮ったんだよ」と言われても分からない。


吉田:そうですね、分からない。でもたまにフィルムの作品を観てフィルムって気づくとやっぱり嬉しいんですよ。


大根:何かが圧倒的に違いますよね。この間フィルム撮影をやって思いましたが、なんとなく機動性が悪いとかお金がかかるとかネガティブなイメージもあったんですけど、そんなこともないですね。早い人は早いですし。


吉田:一番違うのはロールチェンジ。最近はCMでもフィルムが残り何本あるかを気にするし、いいタイミングでロールチェンジが入らないと自分がもどかしい。


Q:V6のMVはなぜフィルムにされたんですか。


大根:生々しい話になっちゃうんですが、意外と予算があったんです(笑)。撮影の重森豊太郎さんから色々教えていただいて。すごく勉強になりました。


吉田:YouTubeで大根さんの電気グルーヴの予告を見たんですが、車の後部座席から撮っているじゃないですか、あれは何ですか。


大根:あれはiPhoneです。


DENKI GROOVE THE MOVIE 2 ? OFFICIAL TRAILER


吉田:あれ見て、やっぱり大根さんすごいなと思いました。あんなこと自分でカメラを回せる人じゃないと怖くて出来ないですよ。iPhoneだとしても、僕だったらビビります。だってもうその瞬間を逃したら終わりだから。


大根:そういう意味では、僕はドラマをやる前にテレビバラエティもやっていたからだと思いますね。1996年くらい、電波少年の猿岩石あたりから、ディレクターが自分でカメラを回すという手法が始まって、視聴者もその映像に慣れたんですよね。それで自分で撮るということに抵抗がない。その後ドラマのBカメとかCカメを自分でやるようになったので、デジタルの方が自分には都合がいいというのもありますね。


吉田:今でもドラマでは自分で回すんですか。


大根:隙あらば(笑)。


吉田:電気グルーヴの映像の中で「あ、シートベルト」という一言に爆笑したんですよ。大根さんがただ石野さんにシートベルトを促すだけなんですけど、ああいうノリの中でふと出た「シートベルト」という即物的な言葉の力。やっぱりあの距離感ならではの奇跡だと思いました。


大根:一昨年、NHKの大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」の演出をやった時に、いつものノリで「じゃあ俺回します」とカメラを掴もうとしたら凄く嫌な空気になりましたけどね(笑)。


吉田:それはやっちゃいけないことなんでしょうね(笑)。


大根:何かあったら責任が取れないと、でもそのうちやらせてくれるようになりましたけど。


Q: BカメやCカメをやるとおっしゃっていましたが、メインはやはりカメラマンさんにやってもらうということですか?


大根:そうですね。ちゃんと自分で回すようになったのは、ドラマの「モテキ」からなんですが、それは女優に対する演出がカメラを持っている方がやりやすかったからなんです。違う業種ですが、スチールのカメラマンって女優とかモデルさんに凄くフレンドリーに色々言葉をかけながら撮るじゃないですか、あの感じでやりたいと思って。ちょうどカメラ機材も良くなってきたので、それで自分でやってみたという感じです。




Vol.2では、売れっ子の撮影監督:近藤龍人さんのお話や、大先輩である市川準監督や岩井俊二監督へのリスペクトなど、興味深いお話がまだまだ続きます!お楽しみに!


Vol.2はこちらから




【ゲストプロフィール】50音順/敬称略




映像ディレクター:大根仁

1968年生まれ 東京都出身。映画監督・映像ディレクター。テレビドラマ『モテキ』『まほろ駅前番外地』『共演NG』などの話題作を数多く手掛ける。2011年劇場版『モテキ』で映画監督デビュー。その他の作品に『バクマン。』『SCOOP』『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』『SUNNY 強い気持ち・強い愛』など多数。 2019年に外部演出家として初めてNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』に参加。『モテキ』で第35回日本アカデミー賞話題賞 作品部門、『バクマン。』で第39回日本アカデミー賞優秀監督賞、第25回日本映画批評家大賞監督賞など多くの映画賞を受賞。現在は長編アニメを制作中。





映画監督・CMディレクター:吉田大八

1963年生まれ。鹿児島県出身。大学卒業後、現在に至るまでCMディレクターとして活動。2007年「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」で長編映画デビュー。第60回カンヌ国際映画祭の批評家週間部門に招待された。「桐島、部活やめるってよ」(12)で第36回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞受賞。最新作は「騙し絵の牙」(21)。舞台では「ぬるい毒」(13)脚本・演出、「クヒオ大佐の妻」(17)作・演出。ドラマ監督作品に「離婚なふたり」(テレビ朝日 19)がある。直近ではAmazonMusicの短編プロジェクト「Music4Cinema」のうち「No Return」(21)を監督した。



【MCプロフィール】


CINEMORE編集長:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。



取材・文:山下鎮寛

1990年生まれ。映画イベントに出没するメモ魔です。本業ではIT企業を経営しています。

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. CINEMORE ACADEMY
  3. テレビドラマ/CM出身からみた映画業界とは 〜メディアを超える映画監督〜 大根仁×吉田大八イベントレポート Vol.1(全2回)【CINEMORE ACADEMY Vol.22】