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テレビドラマ/CM出身からみた映画業界とは 〜メディアを超える映画監督〜 大根仁×吉田大八イベントレポート Vol.1(全2回)【CINEMORE ACADEMY Vol.22】

テレビドラマ/CM出身からみた映画業界とは 〜メディアを超える映画監督〜 大根仁×吉田大八イベントレポート Vol.1(全2回)【CINEMORE ACADEMY Vol.22】

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軸足の置き方



Q:映画の監督をされた後はずっと映画しかやらないという方もいらっしゃると思いますが、お二人は軸足の置き方をどう考えられていますか。


大根:僕の場合は、自分が映画監督というにはちょっとおこがましいのと、あと映画監督という響きにちょっと権威的な印象があるんです。かといってテレビディレクターというほどテレビを中心にしているわけでもないし、たまにCMとかMVとか舞台演出もやってるし。どのジャンルもそれぞれ一つの村がある。映画に行けば映画村をすごく感じるし、テレビやテレビドラマ、CM、舞台、MVにもそれぞれ村みたいなものがあるけど、自分はどこにも属してない感じはありますね。逆に、どこにも属したくないというか。以前、映画監督の三木聡さんに「大根君は自分を映像職人だと思っているかもしれないけど、映像のアナーキストなんだよ」って言われたころがあるんですけど、言い得て妙だなと思いました。


吉田:大根さんは今どういった肩書を名乗られているんですか。


大根:何かに書かなくてはいけない時は、「映像ディレクター」と書きます。それは嘘じゃないので。吉田さんはなんて書かれているんですか。


吉田:聞かれた場合は、「映画監督・CMディレクター」と答えます。でも聞かれないときは、映画監督と書かれていることが多いですね。でも未だに自分の本籍地はCMだと思っています。そこで仕事を覚えて、20年それだけをやってきたので。でも僕が映画しか撮ってこなかったと思ってる若いCMのスタッフもいる。


大根:でも吉田さんは「映画監督」って言わなきゃいけない責任があると思います。だって作品がもう映画ですもん。


吉田:でもCMもやりたい。CMはたまにやって上手くいかなかったりすると、映画とは違う悔しさがすごくある。経済的な理由だけではなく、CMに対してまだ野心が残っていると自分では思ってます。


大根:確かに前に飲んだ時、多分この場では言わないであろう野心的な事を言ってましたね(笑)。


Q:野心というのは、CMでもまだやりたいことがあるということですか。


吉田:やりたいことがあるというより、CMで褒められたいです。今でもたまに中島哲也さんや山内健司さんの昔の作品集を見返しては落ち込むんです。日本の同時代の監督の映画を見て、憧れたり羨ましいと思ったことはあまり無いけど、CMでは全然ある。野心というと格好良いですけど、あのレベルに少しでも近づきたいという執着がまだ残ってる。


これも大根さんには前話したと思いますけど、映画を撮り始めた頃に「CMディレクターっぽくないから、いい」とよく言われたんです。褒めてくれてるんですけど、その度にちょっと傷ついていました。「映画らしいのがいい」って誰が決めた?と、心の中で思っていました。なんだか出身地をけなされているような気持ちでしたね。


大根:自分自身が映画監督だと思っていないから偉そうには言えないんですけど、何をもって映画たり得るかということを考えると、その作品の中に映画でしか表現できないショットがあるかどうかということに尽きると思うんですよね。


吉田さんの映画にはそういったショットがいくつもあるんですよ。例えば『羊の木』(18)の松田龍平が最初に登場する、車の助手席に座って海をみているショット、あれこそが映画なんですよ。あのショットで、こいつを中心に何かとんでもないことが起こるんだとザワッとする。あと『騙し絵の牙』(21)で言うと、松岡茉優さんの素晴らしい中間表情のショットとか、そういうことですよね。


吉田:映画として褒められることに、あまり慣れていないのかもしれないです。作品トータルで「面白かった」とかでなく、あのショットが、とか言われるとちょっと痺れますね、嬉しくて。細部に映画的なものを見出すとか、自分からそう意識することがちょっと照れくさい。


大根:それは僕みたいな、作品や他人を褒めたりすることが得意な人がすればいいんですよ。


Q:大根さんのおっしゃる事はよく分かります。吉田監督の『クヒオ大佐』(09)と『美しい星』(17)は、内容も全然違う作品だし年代も違うのですが、個人的には似ている気がしました。監督のやりたかったことって、実は同じなのかなとぼんやり感じました。


吉田:それには思い当たる節があります。(三島由紀夫原作の)「美しい星」はそれまでも何回か企画しては潰れていて、実は『クヒオ大佐』を撮る直前にもやろうとしてうまく行かなかった。だから一回諦めたつもりで、「美しい星」でやりたかったことを結構『クヒオ大佐』で使ったんですよ。結局「美しい星」も撮れたから、あまり気付かれないし言及されることもないですけど。





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