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『やがて海へと届く』中川龍太郎監督 大事なのはスタッフ・キャストと話せる時間を作れるかどうか【Director’s Interview Vol.198】

(C) 2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会

『やがて海へと届く』中川龍太郎監督 大事なのはスタッフ・キャストと話せる時間を作れるかどうか【Director’s Interview Vol.198】

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撮影前に観たテレンス・マリック作品



Q:撮影の大内泰さんは今回初めて組まれていますが、どういったご縁があったのでしょうか。


中川:本作のプロデューサーは『ノルウェイの森』(10)を手掛けられた小川真司さんです。大内さんはその作品で撮影部のアシスタントのような立場として参加されていました。


学生時代に観た『ノルウェイの森』は印象深い作品でした。自然の美しさや美的な空間設計、「世界はこんなに美しいのに、どうして私たちの心はこんなに死の方向ばかり向いてしまうのだろう」という葛藤。瑞々しい自然の中で死を待つ人たち。『ノルウェイの森』の持つそんな部分が今回のコンセプトと通じるところがあると思いました。それで『ノルウェイの森』に参加していた大内さんに撮影をお願いしました。彼だけはなく、照明の神野宏賢さん、衣装の篠塚奈美さんらも『ノルウェイの森』に参加されていた方々です。


Q:大内さんは『ノルウェイの森』のカメラマンではありませんでしたが、撮影現場で経験されているであろう、その精神性みたいなものを期待されたということでしょうか。


中川:そうですね。大内さんがこれまで撮ってこられたものも勿論大事ですが、何よりも大事なのは対話の相性です。スタッフやキャストをお願いするときには、コミュニケーションを丁寧にとれるかどうかを大事にしています。そういう意味において、大内さんはとても誠実な方でした。



『やがて海へと届く』(C) 2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会


Q:本作で大内さんが捉えたショットは素晴らしかったです。圧倒されるほどに海が美しく撮られていますが、一方で得体の知れないものとしても映っている。人物の捉え方も素晴らしく「どうやったらこんな画が撮れるんだ」と思うほどでした。


中川:撮影前に、テレンス・マリックの『ツリー・オブ・ライフ』(11)と『シン・レッド・ライン』(98)を大内さんと一緒に観ました。二つとも撮り方は全然違いますが、世界にある美しいものが多面的に表現されていて、あらゆるカットの中に生と死が溢れている。例えば『シン・レッド・ライン』では、凄惨な暴力が展開される戦時中のジャングルで、自然や昆虫の存在も同時に描かれる。全く違う命が同じ時間の中に流れています。


それは今回の海も同じです。海は綺麗で雄大な生命の源だけではなく、あるときは人の命を大量に奪うような暴力性も内包しています。海が美しく見える理由はその二つの側面があるからだと思うんです。それを大事にして撮って欲しいと大内さんにお願いしました。


Q:画について具体的な指示はされなかったのでしょうか?


中川:物語上重要なカットに関してはアングルや撮り方の希望を伝えましたが、他の部分に関してはそこまで細かくは言っていません。大内さんにお任せして撮ってもらいました。



『やがて海へと届く』(C) 2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会


Q:トラックの荷台のショットも印象的でとてもいい画でした。あのショットも具体的な指示はなかったのでしょうか。


中川:あのショットはいいですよねー(笑)。今はああいう撮り方ができるロケ地があまりないんです。だからこれに関しては、撮り方も勿論ですが、場所を見つけてくださった制作部の皆様のおかげですね。




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