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『やがて海へと届く』中川龍太郎監督 大事なのはスタッフ・キャストと話せる時間を作れるかどうか【Director’s Interview Vol.198】

(C) 2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会

『やがて海へと届く』中川龍太郎監督 大事なのはスタッフ・キャストと話せる時間を作れるかどうか【Director’s Interview Vol.198】

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岸井ゆきの、浜辺美波、新谷ゆづみ、それぞれへの演出



Q:岸井ゆきのさんの控えめながらも強い存在感が、映画を牽引しているように感じました。本人とはどのようなことを話されたのでしょうか。


中川:真奈は生きるパワーの強い人間なんだと岸井さんにお伝えしました。すみれが死んだことを周囲が簡単に受け入れようとしていることに、真奈は違和感を覚え抵抗している。彼女は自分が感じた違和感を、見て見ぬ振りをすることができない正直な人なんです。言い換えれば、不器用な人でもある。その不器用さについては岸井さんと結構話しました。


また、僕は現場でセリフを変えることがよくあるので、その意図などについても話し合うことが多かったです。特にラストシーンのセリフは脚本上では空欄になっていて、撮影の直前まで内容を決めてなかった。そこをどういう言葉にするかについても話し合いましたね。


Q:ではアドリブはあまり無かった感じでしょうか?


中川:そうですね。この作品ではアドリブはほとんどないです。普段はアドリブは結構入れて欲しいくらいなんですが、この作品ではそれはなかったです。


Q:浜辺美波さん演じるすみれの方は、映画を象徴するアイコンのような印象がありました。浜辺さんとはどのような話をされましたか?

 

中川:浜辺さんに、すみれが通っていた設定の中高一貫の女子校に実際に行ってもらい、そこの先生と話をしてもらいました。また、ビデオカメラをお渡しして、ご自身の身の回りのものを撮ってもらったりして、すみれの過ごした時間を体験してもらったりしました。



『やがて海へと届く』(C) 2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会


Q:実際にそれを体験した上での浜辺さんはいかがでしたか。


中川:目に見える変化は簡単には出づらいと思いますが、役について考える時間にはなっていたと思います。いわゆる“普通の人”を演じる上での助走期間として、その体験は役立ったのではないでしょうか。


Q:劇中では、役者ではない一般の方々も出演されています。そこにはどんな意図があったのでしょうか。


中川:被災者の皆さんには事前に取材させていただき、色々と話を伺いました。そうやって取材していく中で、実際に作品に出演してもらうべきだという気持ちが徐々に芽生えてきました。皆さんの出演に関しては脚本には無かったのですが、色々と考えた結果、撮影直前に出演をお願いしました。震災を扱った物語の中に実際の被災者の方に出ていただくことは、大きな意味があったと思います。


Q:新谷ゆづみさん演じる民宿の女の子は、最初は一般の方だと思って観ていましたが、途中で役者だと気づき驚きました。


中川:新谷さんには撮影前に東北に行ってもらい、被災された方とコミュニケーションを取ってもらったり、海を見てもらったりしたことが大きかったですね。新谷さんはそういうことをストレートに受け止めることができる、感受性のある方です。だからそういった時間がちゃんと取れれば、絶対にうまくいくだろうと思っていました。




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