映画の持つ力
Q:上映時間は26分と短い作品ですが、何か意図はあったのでしょうか?
逢坂:自主映画でしたし経済的な面からも長編は難しかったですね。確実に実現できるという意味でも短編にしました。「長編でもできそうなテーマでしたね」と意見もいただきましたが、無理に長くしても綺麗な映像が並ぶだけで退屈になってしまっていたかもしれません。脚本の時点でも短編を想定していたので、今回は短編で良かったかなと。
Q:映画の最後のコメントにもあるように、本作はカンボジアのサーカス団の現状を訴えます。こういった社会問題に対して、映画が持つ力をどのように思われますか?
逢坂:今回の映画を作ってみて、映画の持つ力を感じることができました。映画を観た方々が寄付をしてくださったり、話をきいてくださったりと興味を持ってくれる方が多かったです。国境を超えて、映画が持つメッセージはちゃんと届くんだと実感しました。
また、今回の映画の中では、彼らの夢を奪ったパンデミックを悪だとは描きませんでした。それはサーカスの少年たちがそういう姿勢だったんです。彼らは問題に対して文句を言ったり、不貞腐れたりはせず、前向きに生きている。その純粋で眩しい少年たちを映画に収めたいという思いで作りました。それで今回は、悲観的な内容ではなく前向きな雰囲気の映画を作ったのですが、そのメッセージを皆さんがしっかり受け取ってくれたのは、僕の中では発見でした。世の中にはいい人たちがたくさんいると、感じることができましたね。
『リトルサーカス』© 2022 A Little Circus
Q:今後はどのような映画を作っていきたいですか?
逢坂:また自主映画で短編をやろうと思っています。僕は、農業が盛んな北海道・十勝出身なのですが、そこを舞台に昭和30〜40年代くらいの農家の結婚式の話を撮る予定です。実際に十勝に移住して拠点を向こうに移し、映画の準備を日常的に進めていきます。もちろん東京での仕事もしながらですが、映画の作り方ということも含めて、実験的な意味合いを持って挑戦したいと思っています。
カンボジアで撮ってみて思ったのは、自分が知っている馴染みの街で映画を撮れると、自分自身が納得できる点も多く色んな判断がしやすい。自分で実際に見たものや聞いたことを頼りに作っていくことを、これからも継続したいと思っています。