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『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版』アダ・ソロモン プロデューサー 妥協してでも検閲版は必要だった【Director’s Interview Vol.201】
冒頭にポルノが必要だった理由
Q:ソロモンさんは、監督のクリエイティビティを最大限に生かし、彼が力を発揮出来る場を与え続けてきたと思いますが、監督と議論を戦わせるようなことはありましたか?
ソロモン:議論は常にありました。議論が無ければお互いの関係がつまらなくなりますよ(笑)。ラドゥ監督と私は長い付き合いで、これまで一緒にキャリアを作り上げてきた仲間なんです。彼の監督としての成功が、私の背中を押してくれたこともあるし、逆に私のネットワークを使って彼の映画作りに貢献することもありました。だから忌憚なく意見をぶつけ合いましたね。
具体的に言うと、冒頭のハードコアなセックスシーンについてはかなり議論しました。私自身そういったポルノを観ることがないので、それ自体がとても攻撃的な感じがしてあまり好きではありませんでした。あそこまで直接的な表現にしなくてもインパクトある表現は他にも出来るのではないか、そう思っていました。一方で監督は、一般の人が実際にポルノサイトにアップロードしているようなものを、そのまま見せたいという強い意志を持っていました。映画の冒頭でハードなものを見せることによって、観客と作り手の間に何かしら対話のようなものが出来るのではないかと考えていたんです。この物語を深く理解してもらうためには、最初にインパクトのあるものに対峙してもらう必要があるのだと。監督とも色々と議論しましたが、そのシーンを入れることに関しては彼を信じることにしました。だからこそ、検閲版は本来の意図が表現できなくなっているので、少々もどかしいのが正直な気持ちです。
『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版』© 2021 MICROFILM (RO) | PTD (LU) | ENDORFILM (CZ) | K INORAMA (HR)
また脚本の段階では、完成した映画の第二部の部分が冒頭に置かれていました。監督はその構成でやりたがっていたのですが、これについても相当議論しました。第二部が最初にあると観客は絶対に混乱すると思ったので、かなり長い議論を経て監督を説得しました。結果今の構成に落ち着くことができたのですが、良い選択だったと思いますね。
監督とは毎日ちょっとしたケンカもしますが、例えるなら姉弟のような関係なんです。ケーキを分かち合いたい時もあれば、お互いのケーキを食べたい時もあるんです(笑)。