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『コレクティブ 国家の嘘』ルーマニア発のドキュメンタリー映画が日本人に問いかけること

©Alexander Nanau Production, HBO Europe, Samsa Film 2019

『コレクティブ 国家の嘘』ルーマニア発のドキュメンタリー映画が日本人に問いかけること

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『コレクティブ 国家の嘘』あらすじ

2015年10月、ルーマニア・ブカレストのクラブ“コレクティブ”でライブ中に火災が発生。27名の死者と180名の負傷者を出す大惨事となったが、一命を取り留めたはずの入院患者が複数の病院で次々に死亡、最終的には死者数が64名まで膨れ上がってしまう。カメラは事件を不審に思い調査を始めたスポーツ紙「ガゼタ・スポルトゥリロル」の編集長を追い始めるが、彼は内部告発者からの情報提供により衝撃の事実に行き着く。その事件の背景には、莫大な利益を手にする製薬会社と、彼らと黒いつながりを持った病院経営者、そして政府関係者との巨大な癒着が隠されていた。真実に近づくたび、増していく命の危険。それでも記者たちは真相を暴こうと進み続ける。一方、報道を目にした市民たちの怒りは頂点に達し、内閣はついに辞職へと追いやられ、正義感あふれる保健省大臣が誕生する。彼は、腐敗にまみれたシステムを変えようと奮闘するが…。


Index


大火災が炙り出す国家的汚職の恐るべき実態



 2015年10月30日、ルーマニアの首都ブカレストにあるライブハウス”コレクティブ”で、演出に使われた花火が周囲に燃え広がり、27人が死亡、180人が負傷するという大火災が発生。さらにその後数ヶ月の間に、複数の病院に入院していた火災の負傷者が次々と死亡。最終的な死者数は64人に膨れ上がってしまう。いったい何故そんなことになったのか?


 ドキュメンタリー映画『コレクティブ 国家の嘘』(19)は、この疑問を徹底的に掘り下げていく。製作と撮影も兼任するルーマニア人のアレクサンダー・ナナウ監督は、調査に乗り出した新聞社のオフィスにカメラをセッティング。編集者チームが事実を究明していくプロセスを追いながら、ルーマニア全体を蝕む汚れた体質を炙り出す。その耳を疑うような事実の羅列は、まるでスリリングな社会派ドラマのようだが、それらは全て現実だ。


『コレクティブ 国家の嘘』予告


 老舗スポーツ紙”ガゼタ・スポルトゥリロル紙”の編集長カタリン・トロンタンは、公立病院で使用されている消毒剤の濃度が、故意に薄められているとの情報を入手する。さらに、製薬会社が濃度表示を偽造していたこと、そして、政府が製品の検査を怠っていたことが次々と明らかになる。火災の被害者たちは病院に運ばれた後に、火傷ではなく感染症により尊い命を落としたのである。


 保健相(日本で言えば厚労大臣)は事実の検証を求めるメディアに対し、消毒剤の濃度は95%で適正だったと反論する。しかし、薄められた消毒剤による細菌感染で、以前から死者が相次いでいた事実を政府が見逃していたことが分かり、”ガゼタ紙”はそれを紙面に掲載。すると大規模な抗議活動が巻き起こり、保健相はあっさり辞任。続いて、製薬会社のCEOダン・コンドリアに対する捜査が開始される中、政府は会見を開いて遂に事実を認める。コンドリアが交通事故で不可解な死を遂げたのはその直後のことだった。




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