©Alexander Nanau Production, HBO Europe, Samsa Film 2019
『コレクティブ 国家の嘘』ルーマニア発のドキュメンタリー映画が日本人に問いかけること
2021.09.30
独裁者チャウシェスクのDNA
第二次大戦後、ソ連の衛星国として共産主義を採用したルーマニアだったが、その後、チャウシェスク大統領が独裁政権を樹立。1989年の革命によりチャウシェスク政権は倒れ、民主化が実現する。2004年にはNATOに、2007年にはEUに相次ぎ加盟。その後は経済的成長と停滞を繰り返しながら、2017年には東欧地域で最も成長率が高い国になった。しかしその間に、政治、軍事、医療、民間企業と広範囲に汚職が蔓延し、違法行為を取り締まるべき立場にある警察や司法関係者にまで深く腐敗が及んでしまった。
『コレクティブ 国家の嘘』©Alexander Nanau Production, HBO Europe, Samsa Film 2019
“コレクティブ事件”は社会民主党(略してPSD)政権下で起きた。PSDは党員である政治家の汚職を放免するために法改正を進める等、腐敗を放置。また同党は、社会民主主義を標榜しつつも、実際はチャウシェスク政権時代に政権の中枢にいた政治家や官僚の末裔たちで構成されているとの説もある。
一方で、ここ数年のルーマニアでは、汚職を推進する議会に抵抗する民衆が、激しい反政府デモを展開している。汚職の免罪を発令したPSD政権に抗議して、2017年2月には6夜連続で実に50万人がデモに参加。その規模は1989年のルーマニア革命当時に匹敵するものだった。