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『マイスモールランド』川和田恵真監督x嵐莉菜 誰かの辛い状況を作っている無関心【Director’s Interview Vol.203】

『マイスモールランド』川和田恵真監督x嵐莉菜 誰かの辛い状況を作っている無関心【Director’s Interview Vol.203】

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「私とあなたは違う」



Q:お二人とも日本以外にルーツを持つという点はサーリャと共通します。そこに込めた思いがあれば教えてください。

 

川和田:小さい頃から「自分は何人なんだろう」「自分の居場所はどこなんだろう」という思いがあり、特に10代のときはすごく悩んだこともありました。それは莉菜さんやクルドの方々と話していても感じたことで、その思いをサーリャに託している部分はあります。


サーリャ役のオーディションを行ったときに、「あなたは自分を何人だと思いますか?」という質問をさせて欲しいと伝えると、涙を流すような子もいました。ルーツに対する思いは十人十色で、それぞれの立場によって思いは違います。そこは大事にしたかったので、映画の中では、父親やきょうだいにその思いを反映させました。


嵐:小さな頃から外国人と判断されてしまうことがよくあり、自分は日本人として生活しているけれど「私は日本人です」と本当に言って良いのだろうかと、これまで葛藤してきました。映画の中でもサーリャが同じような経験をするシーンがありますが、そこでは自分がこれまで感じていた気持ちを入れました。置かれている状況は違うけれど、サーリャと自分は同じなんだと意識しながら演じています。


ルーツのことで悩んでいる方はたくさんいると思います。そういった方がこの映画を観て何か感じていただければと、そう思いながら撮影に挑みました。


『マイスモールランド』©2022「マイスモールランド」製作委員会


Q:劇中、コンビニで働いているサーシャに、おばあさんが「いつまで日本にいるの?」と何の悪気もなく優しい声でかける言葉がとても象徴的でした。 

 

川和田:あのシーンは本当に私たちの日常で、小さい頃から今に至るまでよくあることです。すごくありふれたことを描いてはいますが、でもやっぱりラインを引かれた気持ちにはなるんです。もちろん悪意がなかったとしても、何だか「私とあなたは違う」と言われているような気がしてしまいます。今でこそ慣れましたが、幼い頃は傷ついていました。


目の前にいる人たちは色んな背景や物語がある上で今ここにいるのだという、そういった想像力を働かせるようにしたいと、自戒を込めて思っています。この映画で追体験をしてもらうことで、「言われた方はこう思うのか」と一つの想像力につながればいい。そういう思いを込めたシーンです。


嵐:もちろん悪気はないことは分かりますし、私もどこかで同じようなことをやっていたかもしれません。ただ、「どこから来たの?」「日本語上手だね」と言われると、「私ってどこの国の人間なんだろう」「私は日本人ですと言って良いのかな」と、そこまで考えさせられてしまいます。子供のときは「外国人だ」って言われただけですごく悲しかったし、監督が言ったように線引きをされてしまう感覚もありました。そういう意味では、このシーンは自分の感情を込めて演じることが出来ました。また、これまでの経験を色々と思い出してしまったので、演じながらも胸に刺さるシーンでしたね。




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