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『マイスモールランド』川和田恵真監督x嵐莉菜 誰かの辛い状況を作っている無関心【Director’s Interview Vol.203】

『マイスモールランド』川和田恵真監督x嵐莉菜 誰かの辛い状況を作っている無関心【Director’s Interview Vol.203】

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誰かの辛い状況を作っている無関心



Q:コンビニ店長役の藤井隆さんや大家役の小倉一郎さん、サーリャの担任役の板橋駿谷さんなど、サーリャの周りには温厚で人の良い方がいるのも印象的ですが、残念ながら彼らは事の重大さに対して関心が及びません。このキャスティングがまさに、難民問題に対する日本という国のスタンスを表しているように感じました。


川和田:出演していただいた理由は皆さん違いますが、それぞれのキャラクターを明らかな悪人として描きたかったわけではありません。無関心こそがこの社会の状況を生んでしまっている。それを伝えるキャスティングを目指しました。ある限られた人間の悪意がこの状況を生んでいるわけではなく、優しい気持ちを持った普通の方々の生活にある無関心こそが、誰かの辛い状況を作っている。そういうことを考えて脚本も書いています。悪じゃない中から生まれる悪というものを描けるのではないかなと。


また、藤井隆さんは、以前『パッチギ! LOVE&PEACE』(07)という作品に出演されていて、自分とは違うルーツの人と親しくなってボーダーを越えようとする役を演じられていました。そういう方だからこそ、また同じようにボーダーに関係するような決断を迫られる役をやって欲しいなと。私自身がその作品にすごく勇気をもらったこともあり、そもそも藤井隆さんが大好きだったんです(笑)。

 

『マイスモールランド』©2022「マイスモールランド」製作委員会


Q:すごく悪い人が出てくるわけでもなく、怒りや悔しさをぶつける相手などもいないため、ただただ戸惑い行き詰まっていくサーリャが真に迫っていて観ていて胸がつまります。演じていて苦しくなるような状況のシーンも多かったのではないでしょうか。 


嵐:サーリャになりきっていたときは自分ごとのように辛くて、入管のシーンでは実際に泣いてしまったりもしました。まるで本当に自分の身に起きているんじゃないかと思うぐらい悲しい日々でした。ただ、監督やスタッフ、共演者の方々が明るく現場を盛り上げてくださったので、本番中とカメラが回ってないときの切り替えがうまく出来て、すごく助けられました。現場の雰囲気はとても良かったですね。


川和田:撮影自体はすごくハードだったと思いますが、莉菜さん自身が明るいので、莉菜さんの姿を見てみんな頑張れたと思います。莉菜さんはすごく堂々としてカメラ前に立ってくれたので、私も勇気をもらえましたね。




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