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『冬薔薇』阪本順治監督 引き算すべき最も大事なものは“動作と仕草”【Director’s Interview Vol.211】

『冬薔薇』阪本順治監督 引き算すべき最も大事なものは“動作と仕草”【Director’s Interview Vol.211】

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ハッピーエンドじゃなくて驚いた



Q:最近の撮影は儀間眞悟さんが多かったですが、今回は久しぶりに笠松則通さんでした。

 

阪本:以前に笠松さんとやったのは『人類資金』だから、まあ相当離れていましたね。笠松さんは『人類資金』の後は、李相日組の仕事があって相当疲れていたらしいんですよ(笑)。それでキューバで撮影がある『エルネスト』はちょっと…とご本人が言うので、「では一旦離れましょう」と。長くやっているとチームワークもできるけど、慣れきって頼ってしまうことも出てきますからね。


それでその間は、笠松さんの弟子である儀間と一緒にやっていました。儀間とは『エルネスト』からすでに4本も一緒にやって慣れ親しんできたのですが、そろそろ他の監督の仕事が絶対来るから「離れろ」と言ったんです。実際に今は他の監督の仕事が来てるらしいからね。儀間は笠松さんの最後の弟子だから、笠松イズムは受け継いでいる。これで儀間を旅に出して、笠松さんに連絡して「改めて一緒にやりませんか」となったんです。



『冬薔薇』©2022「冬薔薇(ふゆそうび)」FILM PARTNERS


Q:笠松さんは、李相日監督や西川美和監督とも一緒にやっていますが、監督によって画が全然違う印象がありました。


阪本:笠松さんは作品によってテーマを決めて入る人なんです。だから監督が違えば、当然物語やロケーションの場所も違う。それに伴って笠松さんも違った考えで臨んでいるはず。レンズのミリ数やフィルター、ライティングの色彩など、笠松さんの計算も変わってきますからね。当然、画も違ってきます。


Q:最後に、阪本監督が影響を受けた監督や好きな作品があれば是非お聞かせください。


阪本:1本と言われたら『愛と希望の街』(59 監督:大島渚)ですかね。監督になるつもりで大阪から横浜に出てきて、シネマサークルみたいなものに参加して、初めて『愛と希望の街』を観たのですが、「ハッピーエンドじゃなくていいの!?」って驚いた。今から思えば本当にバカだけどね(笑)。だって子供時代はミニシアターとか無かったし、東映まんがまつりとかハリウッドのメジャーなものばかり観ていたからね。他には同じくそのサークルで観た『幕末太陽傳』(57 監督:川島雄三)かな。そういうのって当時大阪では観れなかったんですよ。そこからは、池袋の文芸坐や銀座の並木座に横浜くんだりから通い詰めることになるわけです(笑)。




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監督・脚本:阪本順治

1958年10月1日生まれ、大阪府出身。大学在学中より石井聰亙(現:岳龍)監督、井筒和幸監督などの現場にスタッフとして参加。89年、赤井英和主演『どついたるねん』で監督デビュー。多くの映画賞を受賞する。藤山直美を主演に迎えた『顔』(00)では、日本アカデミー賞最優秀監督賞、キネマ旬報日本映画ベスト・テン1位など主要映画賞を総なめにした。以降もハードボイルドな群像劇から歴史もの、喜劇、SFまで幅広いジャンルで活躍。その他の主な作品に『傷だらけの天使』(97)、『新・仁義なき戦い。』(00)、『KT』(02)、『亡国のイージス』(05)、『魂萌え!』(07)、『闇の子供たち』(08)、『座頭市THE LAST』(10)、『大鹿村騒動記』(11)、『北のカナリアたち』(12)、『人類資金』(13)、『団地』(16)、『エルネスト』(17)、『半世界』(19)、『一度も撃ってません』(20)、『弟とアンドロイドと僕』(22)などがある。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『冬薔薇(ふゆそうび)』

6月3日(金)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー

配給:キノフィルムズ

©2022「冬薔薇(ふゆそうび)」FILM PARTNERS

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