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ギレルモ・デル・トロとアズカバンの囚人【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE  Vol.1】

ギレルモ・デル・トロとアズカバンの囚人【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.1】

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ギレルモ・デル・トロ版『アズカバンの囚人』



 

 『シェイプ・オブ・ウォーター』でデル・トロがアカデミー監督賞を受賞し、秋には『ハリー・ポッター』シリーズと世界観を同じくする最新作『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』の公開が控えているという今現在の状況、どうしても幻となった「ギレルモ・デル・トロのハリー・ポッター」に想いを馳せずにはいられない。


 というか、普通にこのシリーズとデル・トロの親和性は高いのではないだろうか。もちろん、今となっては彼が監督したらそれはもうデル・トロ映画となってしまうのかもしれないが、実際改めてシリーズへの理解を深めた彼は7作目を監督することに意欲的だったりした。最終巻を読み終えた彼は、その終わり方がまるでディケンズ小説のようだったとさえ語っており(そういえばキュアロンのフィルモグラフィーには『大いなる遺産』がある)、シリーズを大変気に入ったらしい。


 特に『アズカバンの囚人』はデル・トロ向きだったんじゃないかとぼくは思う。と言うのも、シリーズ中でも特に多くの魔法動物(ファンタスティック・ビーストと呼んだほうがタイムリーだろうか)が登場するエピソードだからだ。作中ではハリーの友達で大男のハグリッドが「魔法動物飼育学」の先生となり、授業に様々な生物を連れてくるというのが主軸のひとつとなっている。中でも前半身が鷲で後半身が馬のヒッポグリフは作品を象徴する生き物であり、重要な役割を果たすことになる。怪物が大好きで大柄なハグリッドはデル・トロと通じるところがあるのではないか。もし監督していたらこのキャラクターに自己投影していたのではないか……。


 さらに新任の教師が実は狼人間だったり、襲った相手の精気を吸い取ってしまうその名も吸魂鬼(ディメンター)が登場するなど、『アズカバンの囚人』はいろいろな怪物たちに彩られており、クリーチャー好きのデル・トロにはぴったりの作品だったのではないか。


 きっと狼人間やディメンターはデル・トロ作品の常連にして華麗なるクリーチャー俳優ダグ・ジョーンズが演じたことだろう。狼人間は『パンズ・ラビリンス』のパンのようなかかとの上がった獣脚で歩いただろうし、「キス」で相手の魂を奪ってしまうディメンターは『シェイプ・オブ・ウォーター』の半魚人のように恐ろしげであると同時に官能的だったろうなあ。実際の着ぐるみによる表現にもこだわりそうだ。


 妄想がはかどるけど、これくらいに。幻の『ハリー・ポッター』を空想しつつ、メキシコ人監督たちの魔法にもっとかかりたいなと思うのだった。



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