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『女神の継承』バンジョン・ピサンタナクーン監督 鬼才ナ・ホンジンとのタッグで挑む”新しいホラー映画”【Director’s Interview Vol.224】
ホラー映画に飽きていた
Q:監督にとっては『心霊写真』以来となる純粋な長編ホラー映画です。久しぶりにストレートなホラーを撮るにあたり、特別なチャレンジや課題はありましたか。
バンジョン:ホラー映画をしばらく撮らなかったのは、実はこのジャンルに飽きていたからなんです。もはやホラーは面白くない、他の人たちの作品も同じパターンばかりでつまらないと思っていました。けれどもこの5~6年でホラー映画に変化が生まれ、ワクワクする海外のホラー映画や映画監督に出会うことができた。それがアメリカのアリ・アスター監督やジョーダン・ピール監督、そして『哭声/コクソン』のナ・ホンジン監督だったんです。それをきっかけにホラーへの興味を取り戻したので、今回は従来とは異なる、新しいタイプのホラー映画を撮りたいと思いました。それが私にとっては大きなチャレンジでしたね。
『女神の継承』©2021 SHOWBOX AND NORTHERN CROSS ALL RIGHTS RESERVED.
Q:シチュエーションや人間心理のねじれ、環境の怖さを描くところが他の監督とも共通しているように思います。
バンジョン:これまでの私の映画も、死んだ人間が出てくること自体が怖いわけではないんです。“恐怖”とは人間の行動から生まれるもの。また、真実なのかどうかがわからないことも恐ろしさのひとつです。本作では「今まで自分が信じてきたものは本当に真実だったのか?」という迷いが恐怖に繋がるのではないかと思いました。私自身も年を重ねるうち、「自分が信じていたことは実は何でもなかったんじゃないか、もしかしてフェイクだったんじゃないか」と考えた時に恐怖を感じたんです。
Q:“信頼や信仰の基盤が崩壊する”というテーマは、昨今の世界情勢・社会情勢にも通じるように思います。
バンジョン:その通りです。これまで信じられてきたものに対する疑問が噴き出しているのが、今の時代ですよね。