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『長崎の郵便配達』川瀬美香監督 死者とのコミュニケーションを通し未来を見つめるドキュメンタリー【Director’s Interview Vol.226】
編集マンが撮影に同行
Q:編集を担当された大重裕二さんが「構成・編集」とクレジットされています。実際に大重さんとはどのように編集作業を進めていったのでしょうか。
川瀬:実は大重さんはイザベルさんの長崎ロケに全て同行してくれています。
Q:そうなんですか。
川瀬:記録係も兼ねてくれたのですが、現場で実際に起こった事を一緒に体感をしているんです。だから、「今撮れた映像は、映画のここに配置できるね」という話が現場で確認できています。そのせいか編集作業中に「このシーンを映画に入れるか、入れないか」という議論は全くありませんでした。現場で私たちが心を動かされたシーンはOKに違いないので、そのシーンを大事にして、映画のどこに配置するか、どの順番で見せるのが一番効果的かということを一緒に考えました。
Q:編集マンをドキュメンタリーの撮影に同行させるのは珍しいと思います。過去作でも監督はそのようなスタイルだったんでしょうか。
川瀬:いえ、違います。今回は大重さんに「私は助手をつけずに撮影する」と話したら、「じゃあ、一緒にやろう」ということになり、同行してもらいました。豪華ですよね(笑)。
『長崎の郵便配達』© 坂本肖美
Q:撮影は2018年ですが、編集作業自体はそれからどれくらいかかりましたか。
川瀬:かなりやりました。何年やったかな…。だけど、あまりゴチャゴチャやると失うものも多いので、ずっと素材を触っているわけではないんです。
Q:編集したら、ある程度期間を置いて見直していたのですか?
川瀬:はい。編集作業の間にある程度期間を空けるんです。そうすると自分も冷静になれる。編集していると熱くなってしまい、自分でも訳がわからなくなることがあります。だからクールダウンするまでちょっと作業を止めるんです。
Q:足掛け3年ぐらいの間、寝かせては編集し、ということを繰り返してきたということですね。
川瀬:映画として長く残るものを作りたかったんです。すると奇をてらわない表現を選びとっていくようになります。自然とシーンの長さも決まってくる感覚がありましたし、寝かせている間に「やっぱりこの方向性は違うな」とか。「あ、こっちの方向なんだ」って自分達のなかで理解が進みました。
Q:私はテレビ番組を作ってきたので、放送日という明確な〆切があります。自主映画の場合はどの時点で「完成版」とするのか見極めが難しそうですね。
川瀬:でも、見えてくるものです。「これ以上ないな」っていう時がくるんです。コロナ禍などで何年も完成できなかったんですが、逆にそれがありがたかったです。