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『灼熱の魂 デジタル・リマスター版』ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督 戯曲を観た後、自分が映画化すると確信した【Director’s Interview Vol.228】

©2010 Incendies inc.(a micro_scope inc. company)-TS Productions sarl. All rights reserved.

『灼熱の魂 デジタル・リマスター版』ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督 戯曲を観た後、自分が映画化すると確信した【Director’s Interview Vol.228】

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プロとアマチュアから選んだ俳優たち



Q:戯曲もそして映画も、舞台を単に“中東の国”としか説明していません。それについての考えを聞かせてください。


ドゥニ:場所を特定するべきかどうか、この問題は脚色作業の間じゅうずっと私を悩ませました。最終的には戯曲を踏襲して映画も想像上の場所を舞台にすることに決めました。コスタ=ガブラスの「Z」のように政治的偏見から自由であるためにも。映画は政治をテーマにはしていますが、同時に政治とは無関係でもあります。また「灼熱の魂」の舞台は歴史的な地雷源でもあるのです。


Q:本作は時にほとんどオペラ的と言えるほどにドラマティックです。その大胆さは、夢も希望もない哀しみやメロドラマではなく、むしろ真に悲劇的で気持ちを高揚させるものにしています。これほど感情が強く表現される映画を作ろうと思い立ったきっかけは何ですか。


ドゥニ:非常にドラマティックな素材をメロドラマにすることなく映画に置き換えるにあたって、神話的な要素は自然の光と影の中だけに留め、ありのままのリアリズムの冷静さを選びとることにしました。感情をそのものだけに終わらせることを避け、カタルシス効果を得るための方法とする必要がありました。「灼熱の魂」はまたジャンヌとシモンが母親の憎しみの根源へと至る旅でもあります。これはとても普遍的なテーマで私も深く心を動かされました。しかし脚本の中のドラマティックな要素のバランスを取るのにずいぶん長く時間がかかってしまいました。何しろひとつひとつのシークエンスがそれぞれ1本の映画の素材になりえるほどですから!



『灼熱の魂 デジタル・リマスター版』©2010 Incendies inc.(a micro_scope inc. company)-TS Productions sarl. All rights reserved.


Q:キャストも大変魅力的です。どのようにキャスティングしたのですか。


ドゥニ:「灼熱の魂」ではプロの俳優とヨルダンに住むアマチュアの俳優を起用しました。ヨルダンのキャスティングディレクター、ララ・アタラはイラクからの難民を支援するために彼らをキャスティングしたいと考えており、実際彼らは映画に大きく貢献してくれました。大変だったのは、全員のアクセントをゴラン地域のアラビア語のアクセントに直していくことでした。このため北アフリカ出身の俳優たちの中には、新しく言葉を習わなくてはならない人もいました。


ルブナ・アザバルは、ハニ・アブ・アサドの『パラダイス・ナウ』(05)とトニー・ガトリフの『愛よりも強い旅』(04)で見ていました。パリのキャスティングディレクター、コンスタンス・ドモントフォイが、彼女と会うことを提案したのです。ルブナはナワルの自然な強さと野心を持ったたぐいまれな女優です。ルブナこそがナワルでした。双子のキャスティングには苦労しました。メリッサ・デゾルモー=プーランに決めるまでに長い時間がかかり、シモン役の俳優もほうぼう探し回りましたが、結局身近なところで見つかりました。マキシム・ゴーデットは私の前作に出演しています。『灼熱の魂』に出演した俳優全員にとても満足しています。




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監督・脚本 ドゥニ・ヴィルヌーヴ

1967年10月3日カナダ、ケベック州生まれ。ケベック大学モントリオール校で映画を学ぶ。初の長編『Un 32 Août Sur Terre』がカンヌ映画祭ある視点部門、テルライド映画祭、トロント国際映画祭などを含む35の国際映画祭で上映され、続く2作目の『渦』(00)は約40の国際映画祭で紹介されベルリン国際映画祭国際批評家協会賞ほか25の賞を受賞。長編3作目『Polytechnique』はカンヌ国際映画祭監督週間などに出品、トロント批評家連盟により最優秀カナダ作品賞に選ばれている。本作『灼熱の魂』でも世界30を超える映画祭で絶賛され、カナダのアカデミー賞であるジニー賞8部門受賞、第83回米国アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた。本作の成功により、ハリウッドに進出、2013年にはジェイク・ギレンホール出演の2作品『プリズナーズ』『複製された男』を発表。その後、エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロが出演する『ボーダーライン』(15)がカンヌ国際映画祭コンペ部門に出品、エイミー・アダムス、ジェレミー・レナ―が出演した『メッセージ』(16)がヴェネチア国際映画祭でプレミア上映、東京国際映画祭で特別招待作品として先行上映が行われた。2017年にはカルト的な人気を誇るSF映画の続編『ブレードランナー 2049』を発表、米アカデミー賞で撮影賞・視覚効果賞に輝く。最新作はティモシー・シャラメ主演の『DUNE/デューン 砂の惑星』。2023年には『Dune:Part Two』が公開予定。




構成:CINEMORE編集部





『灼熱の魂 デジタル・リマスター版』

8月12日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次公開

配給:アルバトロス・フィルム

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