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『地獄の黙示録 ファイナル・カット』戦場のカオスを描いた壮大なる叙事詩、新バージョン誕生の背景に迫る

『地獄の黙示録 ファイナル・カット』戦場のカオスを描いた壮大なる叙事詩、新バージョン誕生の背景に迫る


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生まれ変わったコッポラの戦争オペラ



 『地獄の黙示録 ファイナル・カット』(以下『ファイナル・カット』)は、フランシス(・フォード)・コッポラ監督が1979年に発表したベトナム戦争映画『地獄の黙示録』の3番目となるバージョンだ。2番目は2001年、監督はカットしたシーンの多くを復活させ、シーンの順列を変えた編集によって、オリジナル劇場公開版【注0】よりも49分長い202分の『地獄の黙示録 特別完全版』(以下『特別完全版』)を完成させている。


 今回の『ファイナル・カット』はそれをベースに再編集をおこない、上映時間182分と『特別完全版』をスリム化したものだ。詳述すると、たとえばウィラード大尉(マーティン・シーン)たちがハリケーンで立ち往生していたプレイメイトの慰問チームに、燃料と引き換えに個人プレイを要求する長いシークエンスが削られているし、他にもカーツ大佐(マーロン・ブランド)が「タイム」誌に掲載されたベトナム戦争の戦局報道を、解放したウィラードに読み聞かせるシーンも同様の措置がとられている。加えて『特別完全版』で大幅に拡張されたフランス入植者のシークエンスがコンパクトに縮められ、物理的には同バージョンよりも20分ほど短くなっている。



 これらシーンを整理したことに対し、コッポラは米「ヴァニティ・フェア」の取材記事(*1)で「(プレイメイトのシーンは)主題に属していないし、「TIME」誌もかつては重要な報道機関だったが、時代に即したものではない」といった旨の発言をしており、それらの描写が現代において適切ではないと語っている。


 なによりコンラッドの「闇の奥」を原作に脚本を執筆したジョン・ミリアスは、哨戒艇によるウィラードの旅路をホメロスの「オデュッセイア」にもたとえていて、プレイメイトたちは美しい歌声で船を難破させる、海の怪物セイレーンに相当する存在だったという。そのため哨戒艇チームが彼女たちと触れ合ってしまう矛盾をコッポラに説いており(*2)、それが同パートの削除につながったと関連づけられるだろう。




 またフランス入植者のシーンは、編集を担当したウォルター・マーチが対談書(*3)の中で「物理的にも時間軸上にも収まりどころのないシーンだが、ないと銃撃戦で死んだクリーン(ローレンス・フィッシュバーン)の行方がわからなくなる」と語っており、このジレンマの解決策として、コンパクト化しつつも、シーンそのものは残したことを裏付ける証言だ。



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