©2022「異動辞令は音楽隊!」製作委員会
『異動辞令は音楽隊!』内田英治監督 役者たちのプロフェッショナルな仕事に感動【Director’s Interview Vol.233】
「堅物の鬼刑事が音楽隊に異動」というエンターテインメントな設定に、コンプライアンスや高齢化社会、組織人事など、様々な社会問題がとても自然に織り込まれた『異動辞令は音楽隊!』。今の社会を生きていれば、この面白い映画に感情を揺さぶられてしまう人は多いのではないだろうか。手掛けたのは『ミッドナイトスワン』で一昨年の日本映画界を席巻した内田英治監督。オリジナル脚本の映画化が難しいと言われる日本で、『ミッドナイトスワン』『異動辞令は音楽隊!』と立て続けにオリジナル作品を作り上げたことも驚きだ。内田監督は如何にしてこのオリジナル作品を生み出したのか?話を伺った。
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オリジナルはすんなり着地しない
Q:前作『ミッドナイトスワン』が大ヒットして日本アカデミー賞まで獲りました。その次回作と言うことでプレッシャーはありましたか?
内田:ストーリー自体は『ミッドナイトスワン』より前に考えていたこともあり、プレッシャーはそれほどなかったですね。ただ、公開前は「誰も観てくれないのでは…」とマイナス思考になってしまうんです(笑)。そこは『ミッドナイトスワン』も同じでした。
Q:『ミッドナイトスワン』の宣伝プロモーション時は、監督自ら先頭に立ってプロモーション活動に精を出し、いろんなものを変えていこうという気概を強く感じました。実際にすごい結果を出したわけですが、その影響が本作の制作にも及んだ部分はありますか?
内田:映画の作り方は昔から特に変わってないですね。『ミッドナイトスワン』もインディーズみたいなものでしたし。賞を獲ったからといって何かが変わったこともなく、別に仕事が増えたわけでもない(笑)。以前と変わらず淡々とやっています。
『異動辞令は音楽隊!』©2022「異動辞令は音楽隊!」製作委員会
Q:前作は監督渾身のオリジナル脚本でしたが、本作も同じくオリジナルです。企画開発はどれくらいのタイミングで始まっていたのでしょうか。
内田:5〜6年以上前から企画開発は進めていて、ほかのオリジナル作品と同じように紆余曲折がありました。当初は警察音楽隊といってもピンと来る方がいなくて、結構苦労した記憶があります。その後台本も色々と書き換えてようやく着地した感じです。オリジナルってすんなり着地しないんです。
Q:『ミッドナイトスワン』のヒットが、予算増加につながったりしましたか?
内田:いや、それはないですね。いつもと同じく、お金は潤沢では無い状態でやっています。『ミッドナイトスワン』とほぼ変わらないと思いますよ。
Q:予算が潤沢な映画に見えました。
内田:いやいや。僕の今の目標は撮影でパトカーを2台以上呼ぶことですから(笑)。
Q:本作でもパトカーは2台以上出ていませんでしたっけ?
内田:実は1台だけで撮っているシーンが多いんです(笑)。予算を仕切るラインプロデューサーに「そろそろパトカー2台呼びたいんだけど」って言ったら、「まだまだですね」って言われました(笑)。