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『マイ・ブロークン・マリコ』タナダユキ監督 好きでやる以上、原作を変える必要はない【Director’s Interview Vol.241】

『マイ・ブロークン・マリコ』タナダユキ監督 好きでやる以上、原作を変える必要はない【Director’s Interview Vol.241】

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好きなマンガの実写化に違和感を覚えたことはあるだろう。だが一方で、好きなマンガを読みながら映像化を夢想したことも少なくないのではないか。映画『マイ・ブロークン・マリコ』は、タナダユキ監督が原作マンガを読み終えた瞬間、何かに突き動かされるように後先も考えず映画化に向けて動き出した作品だという。マンガの実写化が持つリスクを十二分に理解しながらも、あえてそれに挑んだタナダ監督。映画とマンガ両方を体験した後に感じるのは、原作へのリスペクトと強い愛。タナダ監督はいかにしてこの映画に挑んだのか?話を伺った。



『マイ・ブロークン・マリコ』あらすじ

ある日、ブラック企業勤めのシイノトモヨ(永野芽郁)を襲った衝撃的な事件。それは、親友のイカガワマリコ(奈緒)がマンションから転落死したという報せだった――。彼女の死を受け入れられないまま茫然自失するシイノだったが、大切なダチの遺骨が毒親の手に渡ったと知り、居ても立っても居られず行動を開始。包丁を片手に単身“敵地”へと乗り込み、マリコの遺骨を奪取する。幼い頃から父親や恋人に暴力を振るわれ、人生を奪われ続けた親友に自分ができることはないのか…。シイノがたどり着いた答えは、学生時代にマリコが行きたがっていた海へと彼女の遺骨を連れていくことだった。道中で出会った男・マキオ(窪田正孝)も巻き込み、最初で最後の“二人旅”がいま、始まる。


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再現するのではなく活かす



Q:原作を読み終えた瞬間から映画化に向けて動き出したとのことですが、そこまで突き動かされるようなマンガや小説はこれまでにもあったのでしょうか。


タナダ:さすがに読み終えた瞬間からというのは、これまでなかったかもしれません。過去の経験から原作モノの許諾を得る難しさは痛いほど分かっていて、映画化したいと思ってもどうせダメだろうと思ってしまうことの方が多いんです。でも今回の場合はシイちゃんに影響されてそのまま突っ走ったような気がしますね。


Q:その衝動と勢いは映画自身にも表れていたと思いますが、原作を冷静に分析・検証するようなタイミングはあったのでしょうか。


タナダ:映画はあくまでも興行なので、それを成立させるための試行錯誤はありました。原作が好きで手を挙げましたが、そのまま忠実に再現すると興行に乗せるための尺が足らない。ではどうしようかと試行錯誤すればするほど、なんてよく出来た原作なんだと膝を打つことも多く、それを繰り返しながら脚本を作っていった感じでした。


Q:完成した映画と原作の内容がほぼ同じで、改変箇所のようなものはあまりなかったように思います。だからこそ原作への愛を強く感じたのですが、脚本の向井康介さんとはどのようなことを話されたのでしょうか。


タナダ:その原作が好きでやる以上は基本的には変える必要はなく、変えたいのであれば別の話をやればいい。それを踏まえて向井さんと話したのは、どこを変えようということではなく、この原作を最大限活かすためにはどうするかということでした。



『マイ・ブロークン・マリコ』(C)2022 映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会


Q:このマンガが映像として頭に浮かび上がったのはどのタイミングでしたか?


タナダ:最初に読んだときです。ただ、お話の面白さに惹かれたので映像がそこまで浮かんでいたわけではありません。マンガの映画化はこれまでも何本かやったことがありますが、一番怖いのは画に引きずられること。忠実にやった方がいいとは思うのですが、マンガのコマ割と映画のカット割はあくまでも別。映画の場合、私はお芝居を見てカット割を決めていくので、原作のコマ割を再現するようなことは考えていませんでした。

 

Q:美術やロケ場所などにも原作との共通点を感じます。部屋にあるプロレスマスクなどディテールも再現されていました。各スタッフの皆さんとはどんなことを話されたのでしょうか。


タナダ:マンガを忠実に再現して欲しいとは言っていません。プロレスマスクなどは初見では私自身見落としていたぐらいでしたが、そういった細かいところまでスタッフがちゃんと目を向けてくれていた賜物です。


Q:旅が終わり再び日常がやってくるシーンが個人的にはとても好きです。あのシーンは原作よりも少し要素が増えていますね。


タナダ:原作から変えてやろうというよりも、脚本の流れとして自然にああなったのだと思います。映画の主人公はシイちゃんでヒロインはマリコ、そしてその周りにマキオなど多くの人が出てきますが、あくまでもこの人たちはあのシーンで信号を渡っている多くの中の一人にすぎない。別の人にはまた別の物語があり皆日常に紛れていく。どんなに辛いことがあってもそれは他人には分からない。この旅はシイちゃんにとっては自分事ですが、周りの人に「私をわかってよ!」ということで出発している旅ではない。シイちゃんをちゃんと日常の中に戻して紛れさせて、その日常の中で生きていけるようにしたいなと思いました。




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