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『アフター・ヤン』コゴナダ監督 映画と対話を続けています【Director’s Interview Vol.250】
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映画と音楽、時間軸を持った二つの媒体
Q:映画が好きでその分析や考察をするのは楽しいのですが、いざ自分で作ってみるとなると手法や技術が先行して、本質を見失いがちになりそうです。ですが『アフター・ヤン』はいろんな手法を試しつつもそれに溺れることはありません。その辺はご自身で気をつけたことはありますか?
コゴナダ:ヤンの記憶と現実で違いを見せるため、そこは意図的に撮影手法を変えています。撮影監督と話しながらレンズを変えたりして撮影を進めました。大事なことは、そういった見え方の部分と内容のバランスだと思います。
監督という仕事では毎日何百という選択をしていますが、夜帰宅してその日にした選択を反省しながら映画を作っています。もともと自分は、映画に限らず建築でも家具のデザインでも、作り手がどういう選択をしてそれが出来たかということを常に考えてしまうんです。そこで自分が監督という仕事を得たことによって、そういった気持ちを実際にアウトプットすることができるようになった。そこはすごく好きなところですね。
『アフター・ヤン』ⓒ2021 Future Autumn LLC. All rights reserved.
Q:『リリイ・シュシュのすべて』(01)の挿入歌「グライド」が使われていますが、タランティーノを特集したビデオエッセイでもLily Chou-Chouの「回復する傷」が使われていました。タランティーノとLily Chou-Chouの組み合わせには驚きましたが、本作ではバッハのG線上のアリアが使われていたり、テーマ曲を坂本龍一が作ったりと多彩な音楽が使用されています。音楽の選択はいつもどのようにして決めているのでしょうか。
コゴナダ:素晴らしい観察眼ですね(笑)。音楽は本能的に選んでいるところがあるので、選び方を説明するのはちょっと難しいかもしれません。映画が好きなのは時間軸があるところ。例えば写真や絵画、彫刻にはそういった時間軸はない。そして同じく音楽も時間軸を持った媒体です。映画と音楽という時間軸を持った二つの関係性はとても面白いもので、映画の動きに合わせた音楽を選んでいることもあるし、今言ってくれたタランティーノのビデオエッセイのように意外性を持った組合せをすることもある。でもその選択基準は自分の中でもミステリーですね(笑)。
クエンティン・タランティーノ ビデオエッセイ
坂本龍一さんは元々大好きなので今回コラボレーションできたことは夢のようでしたし、「グライド」は『リリイ・シュシュのすべて』を観てからずっと取り憑かれてる曲なんです(笑)。「グライド」は脚本を書いてるときからイメージしていたので、この映画の中で使えて本当に良かったです。
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監督・脚本・編集:コゴナダ
韓国・ソウル生まれ。クライテリオン・コレクション、ブリティッシュ・フィルム・インスティテュートからの依頼を受け、数多くのビデオ・エッセイを制作。その主な作品には『Ozu: Passageways』(12)、『The World According to Koreeda Hirokazu』(13)、『Wes Anderson: Centered』(14)、『Hands of Bresson』(14)、『Eyes of Hitchcock』(14)、『Mirrors of Bergman』(15)、『Godard in Fragments』(16)、『Way of Ozu』(16)などがある。モダニズム建築の街として知られるインディアナ州コロンバスで撮影を行った『コロンバス』(17)で長編デビュー。同作品はインディペンデント・スピリット賞3部門にノミネートされるなど、多くの批評家から称賛された。また、2022年にはApple TV+配信のシリーズ「Pachinko パチンコ」で、ジャスティン・チョンとともに監督を務めた。小津安二郎を深く敬愛していることでも知られている。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『アフター・ヤン』
10月21日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開
配給:キノフィルムズ
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