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『アフター・ヤン』コゴナダ監督 映画と対話を続けています【Director’s Interview Vol.250】

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『アフター・ヤン』コゴナダ監督 映画と対話を続けています【Director’s Interview Vol.250】

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古今東西の映画を集めて再編集した動画がYouTubeやVimeoに数多くアップされている。監督の作品集形式のものや美しいショットを並べたもの、名匠たちのテクニックを考察したものなど、多種多様で非常に面白い。中には抜群の編集センスでまとめられた動画もあり、その動画がきっかけで観た映画も個人的にあるくらいだ。(権利の問題はあるだろうが)映画の魅力を再発見させてくれる新しいメディアと言えるかもしれない。その意味では、過去作品を取り上げることが多いCINEMOREも趣を同じくするところがある。


そんな中、頭ひとつ抜けたクオリティの動画集がある。それらの動画はビデオエッセイと呼ばれ、クライテリオン・コレクションやブリティッシュ・フィルム・インスティテュートから正式な依頼を受けて作られたものだ。初めて観たときはあまりの素晴らしさに夢中になり、時間が経つのも忘れてそのビデオエッセイを次々と観続けてしまった。何を隠そう、そのビデオエッセイを作っていたのが本作『アフター・ヤン』の監督であるコゴナダその人なのだ。(コゴナダ監督のビデオエッセイはこちら


既にある映画を編集し考察することと、一から内容を考え撮影して映画を作ることは、全く別物だと思っていた。しかしコゴナダ監督の映画を観ていると、そこには何かしら共通するものがあるような気がしてならない。コゴナダ監督は何を思い、どのようにして映画『アフター・ヤン』を作ったのか?本人に話を伺った。


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自然と出てくる映画たち



Q:あなたのビデオエッセイのように映画を分析して考察することと、一から映画を作り出すことは別のことだと思っていましたが、『アフター・ヤン』を観るとそうではない気がしました。ビデオエッセイのように既にある素材で編集するのではなく、ゼロから映画を作り出すことに不安や躊躇はありませんでしたか?


コゴナダ:仰るように、自分のビデオエッセイは深く掘り下げるものだと思います、それが自然な形で進化したのが自分が作る映画なのかなと。映画というものは掘り下げていく作業と観る人との対話であり、私はこれまでずっと映画と対話をし続けています。その一部が自分が作る映画になっている。


ご指摘の通り今回の映画は、元々存在しているもので何かを作るということではない。自分自身で作品を作るということは、観客の皆さんが私の作品を観て対話できるものを作っているということです。自分で映画を作るとは誰にもできることではなく、特別で光栄なことだと思っています。不安や躊躇は特になかったですね。



『アフター・ヤン』ⓒ2021 Future Autumn LLC. All rights reserved.


Q:『アフター・ヤン』はオリジナリティにあふれた新しい映画だと思います。過去の偉大な監督たちの影響をあちこちに感じますが、決して模倣だとは思いません。それはなぜでしょうか。


コゴナダ:偉大な監督たちと自分を比較する気持ちは少しもありませんが、彼らの影響を感じていただけたのはすごく嬉しいですし、改めて謙虚な気持ちにさせられます。色んな映画を吸収した上で作っているので、どうしてもこれまで受けてきた影響はどこかで出てくるものです。今回の作品の中では、テレビ電話で会話をしているシーンはアスペクト比を小津の映画に合わせているのですが、これはあえて意図的にやりました。しかしそれ以外は何かを模倣して作ろうと思ったシーンはありません。元々自分の中に血肉となっている今まで観てきた映画たちが、自然に出てきているのだと思いますね。




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