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『サイレント・ナイト』カミラ・グリフィン監督 大人って結構間違っている【Director’s Interview Vol.262】

© 2020 SN Movie Holdings Ltd

『サイレント・ナイト』カミラ・グリフィン監督 大人って結構間違っている【Director’s Interview Vol.262】

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大人って結構間違っている



Q:世界の終末が日常の中に描かれますが、発想の原点はどこにあったのでしょうか。


グリフィン:私の子供は実際の戦争を見たことがないので、「今度戦争になったらどうなるんだろう」と彼らから聞かれたことがありました。私は「もしかすると核戦争になるかもね」と答えたんです。そこには、自分が子供の頃に読んだ、レイモンド・ブリッグズの「風が吹くとき」という漫画の影響がありました。この漫画は、田舎に住む老夫婦が核戦争に直面する話なのですが、読んだ後2年もの間は夜なかなか寝つけませんでした。それぐらい衝撃を受けたんです。そのことが頭の片隅に残っていたので、核戦争に言及したのですが、「そんなことが起きたとしても、皆で睡眠薬を飲んで抱き合って寝てればいいわ」と冗談ぽくフォローもしておきました。このエピソードが今回の映画の原点です。


でも実際に戦争が起きたらどうしたらいいのか、子供を守れるのだろうか、死に直面した時にはちゃんと抱きしめてあげられるのだろうか、そんな不安を抱えていたのも事実でした。そして世界にはこの問題に直面している人たちも実際にいるんです。


Q:私も子供時代に「風が吹くとき」のアニメを観ました。被爆国で育ったこともあり核戦争というものに対する恐れや不安はとても共感できます。今は親の立場でもあるので、そこもすごく共感できます。


グリフィン:そうですよね。確かに日本は被曝した国でしたね。こんな話になってごめんなさい。ちょっと涙が出て来てしまいました。今のあなたの話で初めて気づかされましたが、日本の方にとって、この映画はいろいろ考えるべきことがあるかもしれませんね。実際にこの映画は、イギリス以外の国の方がより理解されているような気もしています。逆にぜひ聞きたいのですが、映画の中のアートのセリフで印象的なものがあれば教えてください。



『サイレント・ナイト』© 2020 SN Movie Holdings Ltd


Q:車の中で両親とアートが話すシーンで、「その考えが間違っていたらどうするの?」とアートが言い飛び出していく。そこがとても印象に残っています。全くその通りだと思いました。


グリフィン:大人は子供に権威を振りかざしますが、でも大人って結構間違ってますよね。たとえば私の両親は一度も子供に謝ったことがないんです。「ごめん。間違っていた」と一度も言ったことがなかった。親だから当然自分より長く生きてるし、仕事も家も家庭も持っている。大人だから分かっているはずだけど、「全く分かってねぇ!」と子供心に思っていました(笑)。だからアートが言っていることは、私が子供のときに感じていたことなんです。


また、それはイギリス全体にも言えます。アクセントや受けている教育、職業などで、特権階級の人は見分けがつくのですが、彼らはいろんなことを分かっているつもりでも実は全然わかっていない。それは今のイギリス政府を見れば一目瞭然ですよね。


Q:では最後の質問です。本作の中には映画タイトルがたくさん出てきましたが、影響を受けた監督や映画作品を教えてください。 


グリフィン:私の父はアニメーターだったので、よく一緒に映画を観ていました。特に『インディ・ジョーンズ』シリーズは大好きで何度も観てましたね。あと『ガンジー』(82)も印象に残っています。戦争映画もたくさん見せられました。それで、映画監督しかなりたいものがなかったのだと思います。成績が良かったら医者や精神分析家になりたいと思ったかもしれませんが、残念ながら成績はあまり良くなかったんです。でも10歳のときに女優になってもいいかなと一瞬だけ思ったこともありましたね(笑)。



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監督・脚本:カミラ・グリフィン

カメラマンを志して、1990年代半ばから2000年代前半にかけて何本かの商業映画の現場を経験したのち、イギリスのボーンマス映画学校とオランダのザ・ビンガーで映画を学んだ。これまでに『Confused』(03)、『A Weekend with Eva』(03)、『Say Sorry』(04)、『Feeder』(05)、『Vincent』(13)という短編映画を発表しており、これらの作品は数多くの国際映画祭で上映された。本作が初めての長編監督作である。夫は『スリー・ビルボード』(17)、『エターナルズ』(21)などを手がけた撮影監督のベン・デイヴィス。3人の息子ローマン、ハーディ、ギルビーは、揃って本作に出演している。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。




『サイレント・ナイト』

11月18日(金)グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国公開

配給:イオンエンターテイメント、プレシディオ

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