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『マッドゴッド』フィル・ティペット監督 ストップモーションで開く狂気の世界への扉【Director’s Interview Vol.266】

©2021 Tippett Studio

『マッドゴッド』フィル・ティペット監督 ストップモーションで開く狂気の世界への扉【Director’s Interview Vol.266】

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14歳から変わらない強迫観念による映画作り



Q:『マッドゴッド』はストップモーションと実写のみで、CGIは使っていないのですね?


ティペット:使っていない。厳密に言えば、オープニングの城の映像に、30年前のコンピュータ・グラフィックスを使っただけだ。スタジオのクリエイターたちには、ひたすらアナログの必要性を教え続けた。たとえばゴム製のキャラクターに、掃除機で吸い取ったネコの毛とホコリを接着剤で付け、本当に毛が動いたように見せる……とかね。私が『キング・コング』で味わった感覚を伝えたかったんだ。これこそ創造的な仕事だと。


Q:登場するキャラクターは、すべてあなた自身がデザインしたのですか?


ティペット:ほぼ100%デザインした。シンプルなデザイン画を、スタジオのアート・ディレクターに渡し、完全なキャラクターに発展させたものもある。だから私のテイストは99%と言っていいかもしれない。


Q:主人公がどんどん地下の世界に入っていく展開は、あなたの意識の表れなのでしょうか。


ティペット:「地獄はこうである」と捉えられやすいが、これは無意識の世界へ降りていく旅なんだ。私は双極性障害で、やりたいことを始めると止まらなくなり、その反動で何日も寝込んでしまったりする。そんな私の無意識へと分け入るプロセスは、心理学者のカール・グスタフ・ユングが、16年もかけて記した「赤の書」と重ねられると思う。



『マッドゴッド』©2021 Tippett Studio


Q:『マッドゴッド』の中で最も好きなシーン、あるいはキャラクターを教えてください。


ティペット:自分の娘の中で「誰が好き?」と聞かれても、答えられないだろう(笑)。とにかく今は完成しただけで満足だ。


Q: 初めて8ミリでストップモーションの作品を撮った14歳の頃に比べ、現在71歳のあなたの情熱はどのように変化しましたか?


ティペット:基本的には同じ。今も「作らなければ」という似たような強迫観念にかられている。


Q:あなたにはストップモーションを後世に伝えたいという強い意思がみなぎっているようですが……。


ティペット:いや、それはあまり考えていない。これからの未来では、誰もが好きな表現方法で映画を作り続ければいいんじゃないか?


Q:ただ、ストップモーションでは、現在も『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』(22)という傑作も生まれています。


ティペット:ギレルモは親友だ。われわれは同じ卵から孵化したと思ってる(笑)。『ピノッキオ』の上映も彼が招待してくれ、その後、3時間くらい食事をしながらしゃべりまくった。それぞれの哲学やアイデア、今後やりたいことなどをね。現在のテクノロジーでは、CGIでストップモーションのように“見せる”ことが可能になった。私はそういう作品が好きではないが、その方が製作費が出る可能性が高くなるジレンマもある。ただギレルモはオスカー監督だから、1億ドルの製作費にも困らないだろう。われわれの方が実現へのハードルが高いのは事実だよ(笑)。




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監督:フィル・ティペット

1951年9月27日、アメリカ、カリフォルニア州出身。アニメーションおよび視覚効果業界のパイオニアであり、その作品は何世代にもわたって映画ファンや映画制作者にインスピレーションを与えてきた。45年以上に及ぶキャリアは、『スター・ウォーズ』シリーズのメカやクリーチャーから、『ロボコップ』シリーズなどにおけるコンピュータ技術とストップモーションの革命的な融合(「ゴー・モーション」と呼ばれる発明)、アカデミー賞を受賞した『ジュラシック・パーク』の恐竜、『スターシップ・トゥルーパーズ』シリーズの大群虫まで、現代の視覚効果史におけるほぼすべての重要な節目をカバーしている。これまでに2度アカデミー賞®を受賞、6度ノミネート、英国アカデミー賞(BAFTA)、2度のエミー賞、アニメーション界の生涯功労賞にあたるウィンザー・マッケイ賞、フランス映画批評家協会賞(ジョルジュ・メリエス賞)に輝いている。



取材・文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。





『マッドゴッド』

12月2日(金)、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

提供:キングレコード、ロングライド  配給:ロングライド

©2021 Tippett Studio

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