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『マッドゴッド』フィル・ティペット監督 ストップモーションで開く狂気の世界への扉【Director’s Interview Vol.266】

©2021 Tippett Studio

『マッドゴッド』フィル・ティペット監督 ストップモーションで開く狂気の世界への扉【Director’s Interview Vol.266】

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サイレント映画への果てしない愛



Q: 本作はストップモーションの合間にライブアクションも挿入されていますが、すでに30年前の時点で人間を使って撮影していたのですね。


ティペット:そうなんだ。今回、病院のシーンなどで衣装を着せた人たちに演じてもらった。時間のある人をかき集めてね(笑)。実写パートでは、ミニチュアに合わせた雰囲気でセットを作ったものの、見た目がチープになってしまったので、彼らには独自の演出をほどこした。俳優が本業ではないので、何度も同じ動きを繰り返してもらったもののどこかぎこちなく、最終的に反対方向に動いてもらった。つまり前へ歩くのではなく、後ろに歩くわけだ。それを1秒120フレームの高速で撮影し、リバースした映像を1秒24フレームに編集する。そうすることで、リアルだが非日常にも感じられる、サイレント映画のような映像が完成したわけだ。私もサイレント時代の監督になった気分で、病院のシーンだけで3週間を費やした。


Q:スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』(68)やデイヴィッド・リンチの『イレイザー・ヘッド』(77)、『ホドロフスキーのDUNE』(13)、さらに日本のモスラなど、多くのオマージュに溢れていますが、たしかに『メトロポリス』(27)のようなサイレント映画への愛が濃厚ですね。


ティペット:ストップモーションではレイ・ハリーハウゼン、人形アニメではカレル・ゼマンに影響を受けたが、『マッドゴッド』で最もリスペクトを捧げたのは、F.W.ムルナウやフリッツ・ラングなどドイツ表現主義の映画だ。会話ばかりの映画は私にとって退屈に感じられるので、あの時代の作品を愛してしまうのさ。



『マッドゴッド』©2021 Tippett Studio


Q:実写部分には、アレックス・コックスが重要な役で登場します。どのような経緯で彼をキャスティングしたのですか。


ティペット:アレックスとは長年、親交があった。彼と、『ロボコップ』1〜2作目(87、90)や『スターシップ・トゥルーパーズ』1〜2作目(97、04)のプロデューサー、ジョン・デイヴィソンで、いくつかのプロジェクトを進めていた。そのうちの一本が、ガムのオマケのカードを原案にした「マーズ・アタック!」の映画化で、イギリスの作家、マーティン・エイミスにいくつかのドラフトまで作成してもらった。結果的にティム・バートンに奪われてしまい、私たちが最も嫌なスタイルの映画になってしまった(笑)。そんな感じでアレックスとはおたがいの仕事に協力してきたので、今回の彼の参加は幸運だった。


Q:長年の盟友ということで、本作にはデニス・ミューレン(ILMの視覚効果スーパーバイザー)が製作に名を連ねています。


ティペット:制作中に何度もスタジオを訪ねて来て、冒頭での大砲で爆破するシークエンスなどを手伝ってくれたりした。そしてランチを食べながら、進捗状況を報告していたが、おそらく彼の目的は無料のランチだった気もする(笑)。とにかくデニスは、つねに私を励ます存在だったね。




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