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『マッドゴッド』フィル・ティペット監督 ストップモーションで開く狂気の世界への扉【Director’s Interview Vol.266】

©2021 Tippett Studio

『マッドゴッド』フィル・ティペット監督 ストップモーションで開く狂気の世界への扉【Director’s Interview Vol.266】

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1980年の『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』でAT-ATやトーントーンのシーンを完成させ、特殊効果の第一人者となったフィル・ティペット。「スター・ウォーズ」のメカやクリーチャー、「ロボコップ」シリーズのコンピュータ技術とストップモーションの融合、『ジュラシック・パーク』(93)の恐竜や、「スターシップ・トゥルーパーズ」シリーズの虫を作り出し、これまでアカデミー賞を2度受賞。現在も彼が主宰するティペット・スタジオは、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(22)など多くの話題作に関わっている。


そのティペットが、30年前から構想していた監督作。世界中のファンからクラウドファンディングの支援も受けて、ついに完成にこぎつけた。1933年の『キング・コング』のストップモーションに触発され、映画作りを志した彼が、そのストップモーションを全面に使って、観る者を奇怪な世界へ導くのが『マッドゴッド』だ。戦士“アサシン”が地下の世界へ降りて行き、荒廃した風景を彷徨う物語。過去のどんな映画でも観たことのない不思議なキャラクターが跋扈し、想像を絶する衝撃の風景も立ち現れる。フィル・ティペットは、このような映像にどうやってたどり着いたのだろうか。


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30年前の“残骸”をスタジオのスタッフが発見



Q:1990年の『ロボコップ2』で視覚効果を手がけ、その後に『マッドゴッド』に着手して短編を作り上げたのですね。


ティペット:当時の構想としては12ページの脚本で、6分か、長くてせいぜい10分くらいの作品になるイメージだった。アニメーションも使ったストーリーボードを作り、実際に撮影も行って数分の映像は完成したのだけどね……。


Q:そこで製作が止まってしまったんですね。15年ほど前にティペット・スタジオを訪れた際に「監督としてのプロジェクトはあるが、製作費が足りない」と話していましたが、この作品のことだったのですか?


ティペット:いくつかの作品を構想していた。『マッドゴッド』に関しても、折に触れてスケッチをして、夢を書き留めた膨大なメモからアイデアを引っ張り出したりしていたんだ。そうしているうちにスタジオの若いクリエイターが、『マッドゴッド』の人形やセットを見つけ、「ぜひ作品を完成させよう」となったわけさ。



『マッドゴッド』©2021 Tippett Studio


Q:とはいえ、スタジオのスタッフはCGIが専門ですよね。


ティペット:そのとおり。ストップモーションの撮影方法、つまりセットの作り方や照明の当て方などを一から教えることになった。でもそのプロセスを彼らは心から楽しんでくれたよ。スタジオのCG合成アーティストが『マッドゴッド』では撮影監督を引き受けてくれたし、週末には多くのボランティアを集めて、作業に協力してもらった。


Q:ストップモーションのシーンのセットは、どんな大きさなのでしょうか。


ティペット:実寸のだいたい1/6くらいかな。人形はG.I.ジョーのサイズ。そうすることでフィギュア用の衣装や小道具を簡単に買い揃えることができる(笑)。制作の手間が省けるんだ。


Q:30年前に作った映像も、完成作で使われているのですか?


ティペット:3分ほどの映像を使ったんじゃないかな。主人公のアサシンが、多くのクリーチャーがうごめく世界に足を踏み入れる冒頭では、当時のアニメーターの実の子供たちに猿の衣装を着せ、檻の中でケンカさせたりした(笑)。そのほかにも病院のシーンなど何ヶ所かは、30年前にブルースクリーンを使って撮影した。それらを新たな映像にうまくつないだんだ。




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