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『Never Goin’ Back/ネバー・ゴーイン・バック』オーガスティン・フリッゼル監督 人生を楽しむことを自分自身に許す【Director’s Interview Vol.270】

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『Never Goin’ Back/ネバー・ゴーイン・バック』オーガスティン・フリッゼル監督 人生を楽しむことを自分自身に許す【Director’s Interview Vol.270】

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もはや説明不要、いま最も注目される製作会社A24から、底抜けに明るいティーン・ムービーが満を持して上陸だ。2018年にA24配給で北米公開された『Never Goin’ Back/ネバー・ゴーイン・バック』が、約4年の月日を経ていよいよ日本公開される。


テキサス州ガーランドに暮らすアンジェラ&ジェシーは親友同士。高校を中退し、ダイナーでアルバイトをしながら同居生活を送っていた。ある日、アンジェラはジェシーの誕生日を祝うため、憧れのリゾートビーチ旅行をプレゼントする。しかし、その費用のために家賃は不足し、なぜか自宅にいきなり強盗が現れ、やってきた警察にドラッグを発見され、二人は逮捕されてしまう。果たして、アンジェラとジェシーは無事にビーチにたどり着けるのか?


なんと本作は、監督のオーガスティン・フリッゼルによる自伝的映画。ハードな過去を生きてきたという監督だが、この映画はかつての自分を励ますかのように明るくポップでユーモラス、そしてエネルギッシュな一本だ。長編デビューとなった本作の製作秘話をたっぷりと聞いた。


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自らの人生を青春映画にすること



Q:本作は監督の自伝的映画ということですが、劇中の事件や登場人物はどれくらいが事実なのでしょうか?


フリッゼル:かなりの部分が事実に基づいています。映画の最初に起こる、家のテレビを盗まれる事件も実際にあったことで、ここから映画のアイデアが生まれました。当時、私と親友は、親友のお兄さんと、ブランドンという彼の友人の四人で一緒に住んでいたんです。ブランドンは最終的に亡くなったので、そこは変更する必要がありましたが、それ以外は同じ。親友のお兄さんが友人と一緒にドラッグの取引をしようとして失敗し、二人がお金を盗んだと勘違いされて、朝7時に強盗がやってきたんです。実際のディーラーが私たちの家に住んでいたわけじゃなかったんですけどね。


実際に私たちは親友同士だったし、ビーチに行きたいと思っていたし、ガーランドから出て行きたいとも思っていて、ダイナーで働いてもいました。だから、映画の内容はほとんど事実のままです。ただし、バケツをトイレ代わりにしたり、映画で描いたように吐いたりしたことはありません(笑)。



『Never Goin’ Back/ネバー・ゴーイン・バック』©2018Muffed Up LLC. All Rights Reserved.


Q:アンジェラとジェシーの間に恋愛感情はあるのでしょうか? 具体的な表現があるわけではないですが、レスビアンという設定を強調したくないと考えたためでしょうか。


フリッゼル:そこは大きな問題でした。私と彼女は親友であり、明らかに恋人同士でもあったからです。けれども、当時は互いの関係を明確にしていませんでした。私たちはセクシャリティをオープンにして、他の人たちともデートをしていたので、関係をこれと決めるのが難しかったんです。ふたりともバイセクシャルで、私は女性ともたくさん関係を持ちました。最終的には男性と結婚したので、今この話をするのは変な感じもするのですが……。


私は自分がLGBTQ+コミュニティの一員だと声高に言いたいわけではないのですが、そうした一面を誇りに思い、また幸せに感じています。だから、二人の性的関係を隠そうとしたのではなく、ただ、この映画のテーマはそこではなかったということ。きちんと描くには相当の時間を要しますから、じっくり検討しましたし、描くのならば余計なものだと思われたくなかった。編集段階で何度も試行錯誤しましたが、結局は余計だと感じたのでカットすることを決めました。私はゲイ・ライツの支援者なので、それが正しい判断だったかどうかはわかりません。ただ、余計なものにしたくなかったということです。


Q:青春映画では主人公の喧嘩や、あるいは二人の友情が試されるシーンが入ってくることが多いものです。なぜそういうシーンを描かなかったのでしょうか?


フリッゼル:意図的なものです。私はそういうシーンが好きではなく、ドラマを盛り上げるためだけに付け加えられた偽物の葛藤が嫌いなんです。しかも私の経験上、女友達と言い合いになることはあっても、大喧嘩をしたことは一度もありません。怒りが爆発したり、ブチ切れたりということはまったくありませんでした。だから今回の場合、葛藤は二人の外部にあってほしいと思ったんです。二人が喧嘩するのではなく二人に自分の人生が降り掛かってくるようにしたかった。実際の私自身も、親友の彼女といる空間だけが安全で、外部から危険がやってくるように感じていたんです。そこで、映画でもそのように表現しようと思いました。




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