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『ケイコ 目を澄ませて』三宅唱監督x岸井ゆきの ケイコがケイコとしているために【Director’s Interview Vol.271】

『ケイコ 目を澄ませて』三宅唱監督x岸井ゆきの ケイコがケイコとしているために【Director’s Interview Vol.271】

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純粋でまっすぐ。悩み迷いながらも拳を繰り出すケイコの姿は、この映画と対峙する三宅唱監督と岸井ゆきのに重なって見える。ケイコとして存在する岸井ゆきの、それを支え抜く周囲の面々(三浦友和、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美)、16mmフィルムが捉える空気と質感、そして光と影。奇を衒うものは何もない、愚直なまでにストレートな姿勢が、この映画を傑作たらしめる。三宅監督と岸井ゆきのは如何にしてこの映画を作ったのか?話を伺った。



『ケイコ 目を澄ませて』あらすじ

嘘がつけず愛想笑いが苦手なケイコ(岸井ゆきの)は、生まれつきの聴覚障害で、両耳とも聞こえない。再開発が進む下町の一角にある小さなボクシングジムで日々鍛錬を重ねる彼女は、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。母からは「いつまで続けるつもりなの?」と心配され、言葉にできない想いが心の中に溜まっていく。「一度、お休みしたいです」と書きとめた会長宛ての手紙を出せずにいたある日、ジムが閉鎖されることを知り、ケイコの心が動き出す―。


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寄り画は多くないのに、印象に残る顔



Q:とにかく岸井さんの表情が印象的で魅了されます。寄りの画も多いように感じましたがが、そこは意識されていたのでしょうか。

 

三宅:岸井さんがケイコとして全身で存在していたので、僕と撮影・月永雄太さんは「なるべく全身を捉えよう」というスタンスでした。とはいえ現場が進んでいくと、「どうしてもここは近くで捉えたい」という瞬間が多々出てくるもので、その時は素直にその気持ちに従っていました。


岸井:それでも寄りの画はそんなに多くないですよね?


三宅:そうですね、数としては多くないと思います。ただ、「色んな表情のケイコを観た」という印象が残るのだとしたら、それはとても嬉しいことです。



『ケイコ 目を澄ませて』©2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS


多くの映画やドラマは基本的に上半身以上を捉えたショットが基本になっていて、顔を撮ることが当たり前のようになっている。もちろんそれ自体は間違いではなくて、せっかくスターが出ているんだから、トム・クルーズの顔を近くで観たい(笑)。ただ、ダラダラずっと顔を撮ったからって常に最高のものが映るものでもないとも思うので、ここぞという変化があるときには、岸井さんの顔を絶対に逃したくないと思って撮影していました。


岸井:それほど顔の印象が強かったのでしょうか。


三宅:惹かれましたよ。多くの皆さんもきっと、ポスターを目にしたときに、全身が写っているけれど、やっぱりまずケイコの顔に吸い寄せられているのではないか。岸井さんはそうやって映画を引っ張ってくれる、本当に稀有な役者さんだなと思います。




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