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『フラッグ・デイ 父を想う日』ショーン・ペン監督 鑑賞後の映画は観客のもの【Director’s Interview Vol.273】
鑑賞後の映画は観客のもの
Q:今回演じたジョン・ヴォーゲルは事実に忠実でしたか?それとも映画用にアレンジして作ったものでしょうか?
ショーン:役者が自分の役を演じるにあたって明確な判断ができるのは大切なことだと思う。それと同時に、観客に想像の余地を与えないのもよくないと思う。カンヌ映画祭の上映後に、飲みながら何人もの人からジョン・ヴォーゲルについて話を聞かされたよ。どれも本当に興味深い話で、僕が予想したような話もあればそうでない話もあった。でも、映画が上映されたあとは僕の意図なんかどうでもいいんだ。観たあとは、映画は観客のものになって僕のものではなくなる。いずれにしても、彼はすごく奥深い、演じがいのあるキャラクターだと思ったよ。ジェニファー・ヴォーゲルもそうだと思う。ディランはきっと、ジェニファーについて同じことを言うと思うよ。
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Q:ディランさんはジェニファー・ヴォーゲル本人に会ったんですよね。
ショーン:そうなんだ。ジェニファーはカンヌに来てくれた。彼女のすばらしいところは、へこたれないところだと思う。そして、すごくあたたかい。僕は一度、ハリー・クルーズという作家の小説を映画化したことがあった。僕はハリーに脚本を送り、あなたの本を台無しにしてないといいけど、とメッセージを付けた。すると彼は、“あなたが僕の小説を台無しにすることはありえない。もう2,000もの図書館に置いてあるんだから”と言ってくれた。ジェニファーも彼と同じ気持ちだったんだろうね。彼女は、本は本だから映画は独自に解釈していいと思っていたみたいで、僕の好きにさせてくれた。そしてジェズ・バターワースにも同じように自由に書かせてくれた。その上で、僕たちは遠慮のない話し合いをしたんだ。撮影の合間に彼女と意見を交わして、彼女からアイデアももらったし、実際に起こったことではないアイデアもぶつけてきた。