2020.08.04
『インディアン・ランナー』あらすじ
1968年のネブラスカ州。実直に生きるパトロール警官の兄ジョーと、はぐれ者の弟フランク。対照的な兄弟であるその弟が、ベトナムの戦場から還ってきた。精神を病んでしまった彼は、以前にも凶暴性を増して理由なき凶行に走る。しかしジョーは何とかフランクを更生させようとするが・・・。
Index
- 「ハイウェイ・パトロールマン」の“楽曲の映画化”
- スプリングスティーンの世界を、ペンが“自分のうた”として歌い直す
- 「カインとアベル」的な兄弟の物語を、ニューシネマの時代設定で
- “インディアンの使者”のメッセージとは?
「ハイウェイ・パトロールマン」の“楽曲の映画化”
近年、ブルース・スプリングスティーンにまつわる面白い映画が続けて日本公開された。
英国のジャーナリストであるサルフラズ・マンズールの自伝的著書を映画化した『カセットテープ・ダイアリーズ』(19/監督:グリンダ・チャーダ)は、1987年のルートンを舞台に、パキスタン移民の高校生男子がスプリングスティーンの音楽に人生を変えてられていく様を描いた爽快な青春映画だ(原題『Blinded by the Light』は、スプリングスティーンが1973年に発表したデビューアルバム『アズベリー・パークからの挨拶』の一曲目から取られたもの。邦題「光で目もくらみ」)。
サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)映画祭グランプリを獲得した米国のインディ映画『サンダーロード』(18/監督:ジム・カミングス)は、名盤『明日なき暴走』(75)の一曲目「涙のサンダーロード」をモチーフに、テキサスの不器用なダメ警官を描く泣き笑いのドラマだ(ただしワケあって劇中に楽曲は流れない)。
『インディアン・ランナー』予告
この流れの中で、是非いま多くの映画ファンに再発見して欲しい極めつけの一本がある。あの名優、ショーン・ペンが1991年に初めて監督した傑作『インディアン・ランナー』だ。
本作には“Inspired by the song”という形で、スプリングスティーンの名曲「ハイウェイ・パトロールマン」がクレジットされている。1982年、スプリングスティーンの自宅の寝室で“宅録”されたことでも有名な、パーソナルな色合いの濃いアコースティック・アルバム『ネブラスカ』の収録曲である(この次作がモンスターアルバムとなった1984年の『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』だ)。
インスパイアされた、という体裁になっているが、本当は「原案」というクレジットが正確だと思う。言わば『インディアン・ランナー』は、「ハイウェイ・パトロールマン」の世界観と歌詞そのもの、ずばり“楽曲の映画化”なのだ。