1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. インディアン・ランナー
  4. 『インディアン・ランナー』ショーン・ペン、伝説の監督デビュー作。ブルース・スプリングスティーンの名曲との深く親密な関係
『インディアン・ランナー』ショーン・ペン、伝説の監督デビュー作。ブルース・スプリングスティーンの名曲との深く親密な関係

『インディアン・ランナー』ショーン・ペン、伝説の監督デビュー作。ブルース・スプリングスティーンの名曲との深く親密な関係

PAGES


「カインとアベル」的な兄弟の物語を、ニューシネマの時代設定で



 兄弟の物語としての『インディアン・ランナー』を考えると、ルーツは旧約聖書『創世記』の「カインとアベル」に突き当たるだろう。ふたりはエデンの園を追われたアダムとイヴの息子。農耕民カインと遊牧民アベルの確執や相克が語られる。兄ジョーが農業に従事していた設定もカインと共通している。


 この「カインとアベル」を応用した名作としてよく知られるのが、ジョン・スタインベック原作、ジェームズ・ディーン主演の『エデンの東』(55/監督:エリア・カザン)だ。青春スター時代、“理由なき反抗”の焦燥や屈託を体現していたショーン・ペンはまさにディーンの後継であり、先述の『ロンリー・ブラッド』(脚本はエリア・カザンの息子であるニコラス・カザン!)は兄弟の物語という点でも『エデンの東』の直接的な系譜に当たる。



 また「カインとアベル」の関係に強い影響を及ぼすのが父親の存在だ。『インディアン・ランナー』では、あのチャールズ・ブロンソン(1921年生~2003年没)が、ジョーとフランクの人生に決定的な影を残す寡黙な父親に扮し、画面に静かな緊張感と優しい厳粛をもたらしている。


 こういった原型的、あるいは神話的な骨格の物語を、“1968年の物語”として綴っていくのが『インディアン・ランナー』の世界像だ。この時代はアメリカン・ニューシネマの季節。『イージー・ライダー』(69/監督:デニス・ホッパー)や『いちご白書』(70/監督:スチュアート・ハグマン)がそうであるように、本作もロック黄金期の既成曲の数々が印象的に全編を彩る。


 冒頭まもなくのトラフィックフィーリン・オールライト」(68)から、マーティ・バリン帰っておくれ(カミング・バック・トゥ・ミー)」(元々はバリン所属のバンド、ジェファーソン・エアプレインの『シュールリアリスティック・ピロー』(67)収録曲)、CCRグリーン・リバー」(69)、ジャニス・ジョプリンサマータイム」(69)、ラストを飾るザ・バンド「アイ・シャル・ビー・リリースト」(68 原曲はボブ・ディラン)まで――。“1968年の物語”と記したが、時間の推移があり劇の後半は翌年に至っていることが選曲からもよく判るようになっている。



 ちなみにフランク行きつけの店のバーテン役として、ニューシネマを象徴するアイコンのひとりでもあるデニス・ホッパーが出演している。ペンはホッパーをこよなく尊敬しており、主演作『カラーズ/天使の消えた街』(88/監督:デニス・ホッパー)では自らホッパーを監督に推薦し、長らく不遇の状態にあったホッパーの完全復活の一助となった。またホッパーは『理由なき反抗』(55/監督:ニコラス・レイ)で共演したジェームズ・ディーンの盟友でもある。ディーンが市川雷蔵なら、ホッパーは勝新太郎といったような関係性だ。


 さらにペンは後年、ロビン・ライトとの間に生まれた息子に「ホッパー・ジャック」と名づけている。ジャックの由来は、やはりニューシネマの代表選手であり、ペンの監督第2作『クロッシング・ガード』(95)に主演したジャック・ニコルソンだ。ペンは『インディアン・ランナー』に関して、特にニューシネマを意識したわけではないが、当時の映画群の影響は血肉に染み込んでいるほど深いと、当時のインタビューなどで語っている。



PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. インディアン・ランナー
  4. 『インディアン・ランナー』ショーン・ペン、伝説の監督デビュー作。ブルース・スプリングスティーンの名曲との深く親密な関係