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『大映4K映画祭』4K修復監修:宮島正弘が語るフィルム修復の醍醐味とは【CINEMORE ACADEMY Vol.24】

『大映4K映画祭』4K修復監修:宮島正弘が語るフィルム修復の醍醐味とは【CINEMORE ACADEMY Vol.24】

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濃淡だけで表現する白黒の難しさ



Q:今回修復された『夜の河』などは、色味がとてもキレイに出ていましたね。


宮島:『夜の河』で一番苦労したのは上原謙と山本富士子が初めて結ばれるシーン。カメラが祇園祭の赤い提灯を捉えて二人の部屋に移動していく。その後「蛾が入ってくるから電気を消しましょう」と言って電気を消すと、部屋の中が赤に変化する。でもグレーディングしても、この赤がなかなか出ないんです。それで赤を足したりして何とか再現しました。


宮川一夫がすごいなと思うのは、あのシーンを赤い色で撮ったこと。当時は赤で撮るなんて誰も考えつかなかった。当時、二人が結ばれるシーンであの象徴的な赤を観たときには、ものすごく胸を打つものがありました。その記憶もあって、今回の赤の色味を作ったんです。


僕は宮川さんに恋焦がれて大映に入り、宮川さんとずっと一緒に仕事をしてきました。仕事の最中に昔話を聞いたりしていたので、宮川さんの作品には自分が一番近くにいるという自負もあります。だから『無法松の一生』(43)の修復をやっているときなんて、これほど嬉しいことはなかったですね。『無法松の一生』は、後の『羅生門』(50)や『雨月物語』、『山椒大夫』、『近松物語』などの原点なんです。宮川一夫は『無法松の一生』をやったおかげで、すごいカメラマンになっていくんです。



『夜の河』©KADOKAWA1956


Q:カラーとモノクロでは修復の難しさは変わってくるのでしょうか?


宮島:僕ら人間の目はカラーでものを見ているから、当然カラーの方が楽なんです。白黒は濃淡だけで表現しなければならないので誤魔化しようが無い。濃淡で朝や夕方の光を見せるというのは並大抵のことじゃありません。宮川さんは小さい頃に絵を習っていたそうですが、墨絵だったので色を使わせてもらえなかったそうです。そこの中から色を見つけたんでしょうね。白黒でありながら色があるように見せた人ですから。だから同じ黒でも『羅生門』と『雨月物語』では全然違う黒になっていた。黒の出方一つでその雰囲気が変わるんです。




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