©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会
『レジェンド&バタフライ』木村拓哉 撮影所が楽園になる瞬間とは【Actor’s Interview Vol.28】
東映の創立70周年記念作品『レジェンド&バタフライ』。本作が描くのは、まさに戦国時代のレジェンドである織田信長とその妻、濃姫。主演に木村拓哉共演に綾瀬はるか、脚本に古沢良太、監督に大友啓史と、豪華で強力な布陣が揃い、映画館で観るべき壮大な作品が誕生した。信長を演じるのは本作で二度目という主演の木村だが、この超大作に一体どのように挑んだのか、話を伺った。
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撮影所が楽園になる瞬間
Q:本作は東映の京都撮影所を中心に撮影が行われました。撮影現場だけにとどまらず、岐阜での騎馬武者行列にも撮影所の皆さんが駆けつけたとのことですが、一緒にお仕事をされた京都の皆さんの印象はいかがでしたか。
木村:武者行列のときは、衣装さんやメイクさん、小道具さん、そして自分が跨がせていただく馬まで京都から駆けつけてくれました。そんな皆さんを見て感じるのは「現場が好きなんだ!」という熱い思い。武者行列では久しぶりにお会いできたので、照れ隠しで「なんで今回来てくれたんですか?」と聞くと、みんな口を揃えて「現場が好きなんだよ」と返してくれる。向こうも照れ隠しで「木村拓哉に会いたかった」とは言わず、「殿に会いたかったんで」という言い方をしてくる(笑)。そういう映画人の皆さんがいることこそが、あの撮影所の魅力なんだと思います。
「いいものを作りたいやんか」という熱に溢れているから、あそこに行くとものすごくワクワクする。普段自分は江戸をホームとしてやっているので(笑)、江戸ではあまり漂わない空気を感じるんです。スタジオのゲートをくぐると、「こいつは出来るんやろか?」と職人たちが手ぐすね引いて待っている。それで実際に仕事をして「お前、出来るやんか」と認めてもらった瞬間に、あの場所は楽園になるんです。
撮影所の皆さんはモニターを通して芝居を見るのではなく、皆それぞれの肉眼で直接芝居を見ている。各々のセクションが各々の見るべきところを見つつ、俳優のことも見てくださる。監督が「カット!」と言ってOKを出す前に、皆さんとチラッと目があったりすると、こっそりサムズアップしてくれる(笑)。一日いたら鼻の中が真っ黒になるような埃っぽいスタジオですが、あのサムズアップを見るとここは楽園だなと思えるんです。
『レジェンド&バタフライ』©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会
Q:大友監督ならではのダイナミックな画作りがとても魅力的です。まさに映画館で観る画だと思いました。カメラが動いても動いてもまだ続いていくような感じもあり、現場も大掛かりだったかと思いますが、実際の現場はいかがでしたか。
木村:これは監督の画風だと思いますが、今回はキャンバスに例えると隅から隅まで全部着色しているような描き方をしています。実はどんなシーンでも“大気”に着色しているんです。判別できるかどうか微妙な感じにスモークを焚いているのですが、それで照明や光がより美しくなる。出演者の喉を痛めないスモークを開発してくれたスタッフの方が、ブワーッとセット中にスモークを撒いて、それをアシスタントの人たちが全体的に漂わせる。それがフレームの中に均一化した瞬間に、監督から「よーい!」の声がかかるんです。
撮影部なんて、監督が指示してないにも関わらずスタジオ中のレールを集めて、ものすごい距離のレールを引いていました。「これだけレールがあると監督絶対喜ぶと思うんだよね」って準備しているんです。脚本では1ページにも満たないシーンにも関わらずです。そうすると監督が「おぉ!」と喜ぶ。監督はそういうところを楽しんでますね。だって本番中に叫んでる人ですから(笑)。モニターを見ながら「いい!」とかいうのが芝居の最中に聞こえてくる。あれ多分監督の声も入っちゃってますね(笑)。