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『生きててごめんなさい』山口健人監督 主人公に投影した丸裸の自分【Director’s Interview Vol.278】

『生きててごめんなさい』山口健人監督 主人公に投影した丸裸の自分【Director’s Interview Vol.278】

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表情から出てくる醜さや脆さ



Q:本作はオリジナル脚本ですが、この話を思いついたきっかけを教えて下さい。


山口:この映画を作るにあたり、プロデューサーから「メンタルヘルス(メンヘラ)をテーマにしたい」と言われたんです。それで最初に生まれたのが莉奈でした。莉奈を中心に考えたとき、僕なりの視点を入れるためには自分に近しい男性の存在があった方がいい。それで修一が生まれました。そこから莉奈に振り回される修一という構図ができて、徐々にキャラクターが膨らんでいきました。


Q:その修一と莉奈を演じた、黒羽麻璃央さんと穂志もえかさんに圧倒されます。お二人のキャスティングの経緯を教えてください。


山口:穂志さんはオーディションで決まりました。ご本人も仰っていますが、彼女は莉奈に似た部分があって共感性がすごく高かったんです。黒羽くんに関しては、藤井(道人)さんに勧められました。黒羽くんって2.5次元的な舞台をやっているようないわゆるイケメンだから、最初はどうなんだろうと思っていました。そのときに藤井さんは「人間臭い醜い顔をするから、それを撮ってあげてほしい」と言ってくれたんです。それで実際にお会いすると、イケメンの中にも人間臭さがあって、表情を作ると醜さや脆さが見えてくる。そこがすごくいいなぁと思ったんです。


実際の現場では、穂志さんは莉奈に似ているから自由にやってもらいそれを応援する感じでした。穂志さんが感じたことを現場で反映したりもしています。一方で黒羽くんに関しては、修一は大体僕自身なので「俺はこうだから」って逐一説明していきました(笑)。ここはこれだけ辛い状況なんだと説明して、精神的な重荷をどんどん乗せていくような感じでした。比較的順撮りで(脚本のシーンの順番通りに)撮影できたので、黒羽麻璃央というしっかりした人間が徐々に追い詰められていって、いい感じで醜くなってくれた。僕がどんどん追い詰めていったのかもしれませんが(笑)。



『生きててごめんなさい』©2023 ikigome Film Partners.


Q:修一は怒った後にすぐ謝っちゃう。そこに彼の性格がよく表れていたと思います。


山口:ケンカのシーンでは酷いセリフを口にしなければいけないけれど、本人的にはあまり言いたくない気持ちがある。その辺がお芝居に表れていたと思います。言いたくないけど言っちゃっている、自分自身も苦しみながら言っている感じが上手く表現できていました。本番が終わったら黒羽くんが泣き出して「なんでこんなことを僕は言っているんだ」というのが結構ありました。「ひどいこと言わせてごめんなさい」と思って撮っていました(笑)。


Q:ケンカのシーンでは、カメラがずっと穂志さんを捉える中、彼女の表情が微妙に変わっていくショットがあります。あの表情はものすごかったですね。


山口:あそこは演出的にかなり抑えて我慢してもらったシーンでした。あえて感情を表に出さないように我慢させることで、出てきそうなものを止めるという表情の変化があったのだと思います。


Q:そういったシーンは、撮影前にディスカッションなどされたのでしょうか。


山口:まさにディスカッションしながら撮影していました。現場で出てくるものが結構多かったので、二人と話しながら言い回しや言葉自体を探っていきました。脚本通りに一言一句違わずセリフを言って欲しいのではなく、現場に立って会話をしたときに、出てくる言葉や気持ちを大切にしたい。そこは二人とディスカッションしながら、その場でセリフを修正していました。




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