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『生きててごめんなさい』山口健人監督 主人公に投影した丸裸の自分【Director’s Interview Vol.278】

『生きててごめんなさい』山口健人監督 主人公に投影した丸裸の自分【Director’s Interview Vol.278】

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企画プロデューサー・藤井道人



Q:二人の部屋、修一の職場、駅までの通り、ペットショップや居酒屋など、出てくる画の奥行きとレイヤーを強く感じました。画作りはどのように進められたのでしょうか。


山口:恋愛映画って、一言でいうと距離感だと思うんです。例えば『ロミオとジュリエット』だと、家の中にいるジュリエットと外にいるロミオがいて、最後は二人の距離感がゼロになり一緒に死ぬことになる。なので二人の距離感は、レイヤーを作れるような場所を意識しました。特に彼らが住んでいる家は、部屋が縦に3つ並んでいる珍しい間取りになっていて、これはいいレイヤーが作れるなと。キッチンがあり、修一ゾーン(部屋)があり、その奥に莉奈ゾーン(部屋)がある。追いかけると自分のゾーンに逃げて行くような、身体的な距離感を精神的な距離感に投影させられる画作りを心がけました。意外とあの二人は同じ空間にいないし、体はくっついていても気持ちはくっついてない場面が多い。その辺は意識しています。


Q:踏切のシーンもすごく印象的でした。


山口:あれは相米慎二のオマージュ、パクリです(笑)。『セーラー服と機関銃』(81)で薬師丸ひろ子がずっと奥から歩いてきて踏切の前でしゃがむという、どエラいワンカットがあるのですが、そこと同じ場所なんです。


Q:プロデューサーの藤井道人さんとはどのようなお話をされましたか。


山口:基本的には僕に任せてくれました。例えで言うとヨーダみたいな存在です。具体的には言わないけれど何かしら方向性を提示してくれる。監督としての個性を生かしつつ、作品としての柱が立つように導いてくれました。一番記憶に残っているのが「丸裸になれよ」と言われたこと。「なに恥ずかしがって格好つけようとしているんだ。もっとお前の見せたくないものを見せた方がいい」と言われました。まさに最初に言った通り修一がほぼ僕なのは、藤井さんの言葉で自分を投影していった部分が大きいですね。



『生きててごめんなさい』©2023 ikigome Film Partners.


Q:「アバランチ」(21 TV)では一緒に演出をされていますが、そのときとは話す内容は違いましたか。


山口:「アバランチ」のときは何が面白いのか、多くの人にどうやって届けるのかという視点の話でしたが、今回はもっと内面をというところにフォーカスしていた。そこは違いましたね。基本的に藤井さんは何も言わないんです。今回は企画プロデューサーですが藤井さんも監督なので「監督としてお前がどう生きるか」について言うだけで、いい意味で何も言ってこないですね。


Q:編集など技術的な視点でのアドバイスなどはどうですか。


山口:編集のアドバイスはありますね。僕の方針でロングテイクを多く撮っていたのですが、「さすがにこれは飽きるかな」と思って編集で短くしたりすると、「もうちょっと長くした方がいい」「ここは引きのカットだけの方がいい」と言ってくれました。僕が日和ったときに「行け」と言ってくれるんです(笑)。




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