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『生きててごめんなさい』山口健人監督 主人公に投影した丸裸の自分【Director’s Interview Vol.278】

『生きててごめんなさい』山口健人監督 主人公に投影した丸裸の自分【Director’s Interview Vol.278】

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先日、Netflixと戦略的パートナーシップを締結したBABEL LABEL。今後5年間の長期提携では、大型企画の開発とハイクオリティな映像コンテンツの製作を行うとのこと。日本発のコンテンツスタジオとしてトップを走り、まさに世界へと羽ばたこうとしているBABEL LABELだが、所属クリエイター二人が手掛けた映画がこの度公開となる。映画『生きててごめんなさい』は、BABEL LABELの創設者である藤井道人が企画・プロデュースを務め、BABEL LABELを黎明期から支えた山口健人が監督を務めた作品。山口監督は藤井監督の下で多くの作品に携り、綾野剛主演のドラマ「アバランチ」では藤井と共に演出を担当した新鋭だ。


『生きててごめんなさい』では、今の若者が抱える”痛み”や”病み”がリアリティ溢れる視点で炙り出される。そんな本作だが、山口監督はいかにして作り上げたのか。話を伺った。



『生きててごめんなさい』あらすじ

出版社の編集部で働く園田修一(黒羽麻璃央)は清川莉奈(穂志もえか)と出逢い、同棲生活をしている。修一は小説家になるという夢を抱いていたが、日々の仕事に追われ、諦めかけていた。莉奈は何をやっても上手くいかず、いくつもアルバイトをクビになり、家で独り過ごすことが多かった。ある日、修一は高校の先輩で大手出版社の編集者・相澤今日子(松井玲奈)と再会し、相澤の務める出版社の新人賞にエントリーする。一方、自身の出版社でも売れっ子コメンテーター西川洋一(安井順平)を担当することになるが、西川の編集担当に原稿をすべて書かせるやり方に戸惑う。修一は全く小説の執筆に時間がさけなくなり焦り始める。そんな中、莉奈はふとしたきっかけで西川の目に止まり、修一と共に出版社で働く事となる。西川も出版社の皆も莉奈をちやほやする光景に修一は嫉妬心が沸々と湧き、莉奈に対して態度が冷たくなっていく。いつしか、喧嘩が絶えなくなり―。


Index


自分を投影した修一



Q:主人公の二人は、何もが思い通りに行かず葛藤し続けます。監督自身は二人に共感する部分はありましたか。


山口:修一はほぼ僕みたいな男の子なので、何となく自分が思っていることをキャラクターに乗せています。一方で莉奈は僕には全く似てなくて、ある種羨ましい部分もある。「こういう風にやれるといいな」と思うことを、莉奈に託しているのかもしれません。


Q:具体的にどんなことを修一に乗せたのでしょうか。


山口:叶わないことって多かれ少なかれ皆あると思うんです。僕の場合は、オーソン・ウェルズのように25歳で『市民ケーン』(41)みたいな映画を撮ることを夢見ていましたが、それは叶わなかった。そうやって叶わない中でも頑張っていますが、修一は逆でちゃんと向き合った結果、自分らしく生きることを選ぶ。そうやって何かを諦めたとしても、自分を受け入れることができればそれでいいと思うんです。そんな気持ちを彼に投影しています。



『生きててごめんなさい』©2023 ikigome Film Partners.


Q:修一は小説家になりたくて出版業界に入っているものの、やりたくない仕事を続けています。監督ご自身が映像業界にいる中で感じたことや得た経験なども、そこには反映されているのでしょうか。


山口:まぁありますね。自分のやりたいことを全部好きなようにやれている人は、この業界にはほとんどいない。おそらくジェームズ・キャメロンですらそうだと思います。50億円くらいの予算があって「好きに使っていいよ」なんてことはまずない。やりたいこととやれないことというのはどんな仕事でもあると思います。そこは自分なりの思いを反映させています。理想と現実との間で葛藤があり、「俺はこうじゃないんだ」と逃げ出したくなる気持ちはあったので、そこは裸になって自分を投影させました。


Q:一方で、莉奈は修一とは対になる存在ですが、その対比には何か狙いがあったのでしょうか。


山口:修一が抱えているのは「言えない、行動できない生きづらさ」なのですが、莉奈は「言っちゃう、行動しちゃう生きづらさ」なんです。一見真逆なんですが、結果的には同じような葛藤を抱えている。そんなことを描きたかったのかなと。




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