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『対峙』フラン・クランツ監督 観客に感じて欲しい“痛み”とは 【Director’s Interview Vol.279】

© 2020 7 ECCLES STREET LLC

『対峙』フラン・クランツ監督 観客に感じて欲しい“痛み”とは 【Director’s Interview Vol.279】

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高校で起こった銃乱射事件、その被害者と加害者の親同士が話し合いを持つ。映画『対峙』では、ほぼ全編がその対話のみで構成される。対話への導入、密室劇、サスペンスフルな緊張、感情の流れ、変化する視点、その緻密に計算された演出は観客を圧倒し目を背けることを許さない。


脚本・監督したのは俳優のフラン・クランツ。何と今回が初の脚本・監督作とのことだが、その完成度の高さには驚きを禁じ得ない。クランツ監督はいかにして本作を作り上げたのか?話を伺った。



『対峙』あらすじ

アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が勃発。多くの同級生が殺され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。それから6年、いまだ息子の死を受け入れられないジェイとゲイルの夫妻は、事件の背景にどういう真実があったのか、何か予兆があったのではないかという思いを募らせていた。夫妻は、セラピストの勧めで、加害者の両親と会って話をする機会を得る。場所は教会の奥の小さな個室、立会人は無し。「お元気ですか?」と、古い知り合い同士のような挨拶をぎこちなく交わす4人。そして遂に、ゲイルの「息子さんについて何もかも話してください」という言葉を合図に、誰も結末が予測できない対話が幕を開ける──


Index


4人の痛みを観客に近づけたい



Q:この映画が持つ力に圧倒されつつも、うまく消化しきれない部分があったのも事実です。それほど考えさせられる内容でした。観客からはどんな反応がありましたか?


クランツ:この映画にはポジティブという言葉は向いてないかもしれません。おっしゃる通り、題材的にも圧倒されてしまう内容なので、とてもエモーショナルだったという意見が多い印象でした。


Q:なぜこのテーマを映画にしたのでしょうか。


クランツ:2018年にパークランドの高校で銃乱射事件が起きたのですが、それは自分が親になって初めて起きた事件でした。アメリカではそれまで多くの銃乱射事件が起きていたはずなのに、その日はこれまでとは違う感情に襲われました。ひどく悲しくて混乱し、感情が千々に乱れてしまった。こんな世界で自分の子供を育てていけるのかと不安を覚えました。そして思ったんです。何かを変えなければいけないと。そのためには、被害者家族やそのコミュニティをまず知る必要があるのではないか。それがこの映画を作るきっかけでした。



『対峙』© 2020 7 ECCLES STREET LLC


そういった思いもあり、4人の親たちの痛みを観客に近づけたかった。彼らの対話はとても勇気がいる行為です。話しにくい内容を頑張って口にしている。だからこそ、観客の鑑賞体験からも無駄な要素は剥ぎ取り、劇中の4人を受け入れ寄り添えるような作品にしたかった。回想や音楽も使わず敢えて長い会話で映画を支配させたのはそのためです。観ていると疲弊するので、ある意味耐久戦になっています(笑)。商業的には大変な映画になったのかもしれませんが、実際に起きていることを誠実に見せようとした結果です。




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