役作りに活用した膨大な資料
Q:東出さんがお話を受けてから撮影までどれくらいの時間があったのでしょうか。
東出:話をもらったのは撮影の2ヶ月くらい前でしたが、別の作品もあったので準備期間は1ヶ月でした。
Q:体重を増やしたり、専門用語を覚えたりと、たった1ヶ月で準備されたのですね。
東出:そうですね。しかも松本監督と脚本の岸さんが用意した資料の数が膨大で、裁判記録から2ちゃんねるのスレッドのログまで、いろんなものがありました。撮影中にも実際の最終陳述書を見せてもらい、読むとこれがすごくいい内容なんです。最終陳述のシーンは当初別のセリフがあったのですが、実際のものでいきましょうとお願いしました。あとで壇先生に聞くと、「実はあの時期フェリーニにはまってたから、あの陳述書はフェリニーニからサンプリングした」って言われて、さすがに「マジか!」と驚きましたね(笑)。
松本:僕らはこの事件について3年くらいかけて調べていたのですが、東出さんに初めてお会いしたとき、東出さんはすでに僕らと同じレベルで話をすることが出来た。相当調べてくれていたんだなと。信頼できる方だと思いましたね。
『Winny』東出昌大(金子勇役)
Q:金子さんが専門用語を捲し立てるところなど、プログラマーならではの感じもよく出ていました。
東出:セリフはエグかったですね(笑)。専門用語が多いのですが、その意味を知らないとうまく話せない。だから、サーバークライアント方式や、Peer to Peer(P2P)など、その言葉が何を意味するのか、プログラム監修の方に教えていただきました。そうやって理解して噛み砕いた上で自分の言葉にしていきました。
Q:金子さんをはじめ、三浦貴大さんの壇先生、吹越満さん演じる秋田弁護士など、皆キャラクターが立っていて魅力的です。他の方のキャスティングはどのように進められたのでしょうか。
松本:ダメ元でも、まずは演じて欲しい方にお声がけしました。取材中に実際の関係者とお会いする中で、この人はあの役者さんにやってほしいなと脚本を書きながらイメージしていたんです。それが皆さんバッチリハマりましたね。お受けいただいて嬉しかったです。
役者の皆さんは、この事件とテーマに関心を持ち強い意志で参加してくれました。それぞれ独自に取材して役を深掘りしてくれて、皆さんのプロフェッショナルさを改めて感じました。