フィンチャーとソーキン
Q:劇中には様々なシーンがありましたが、どのくらいの期間撮影されたのでしょうか。
松本:ちょうど3週間ぐらいでしたが、無茶苦茶タイトでした。裁判所のシーンはカット数が多いので、カメラも同時に3〜4台回して撮っていました。一方で事前の準備段階では、東出さんや他のスタッフ含めて共有できる時間があったので、そこには贅沢に時間をかけました。
Q:実録裁判モノでもあり、お仕事映画でもある。大人の映画だという印象が強かったです。画角やカメラワークも凝っていて、裁判所から出てくる金子さんらを報道陣が待ち受けるショットは、デヴィッド・フィンチャーの『セブン』(95)を彷彿とさせました。
松本:僕も撮影の岸さんもフィンチャーが大好きなんです。こういう題材だからこそスタイリッシュにしたいと岸さんと話していました。レンズの選択など細かいところも含めて、出来る限りのことはやれたのではないかと。
Q:音楽も『ソーシャル・ネットワーク』(10)を想起しました。
松本:そこもそうですね(笑)。『ソーシャル・ネットワーク』だけではなく、いろんな音楽をモチーフにしてそれを組み合わせて作りました。金子さんの心の宇宙みたいなものをテーマにしています。冒頭のタイトルバックに流れる曲と、金子さんが星を見つめたり、写真を撮ったりしているシーンの曲は全く違って聞こえますが、実は同じコードになっているんです。
『Winny』(C)2023 映画「Winny」製作委員会
Q:いろんな監督とお仕事をされている東出さんですが、松本監督はその中でも相当若い方だと思います。現場の印象はいかがでしたか。
東出:自分より年下の監督は初めてでしたね。でもとても柔軟な監督だったと思います。俳優部が質問しても答えは早かった。スタイリッシュなところもしかり松本監督はそのシーンやショットが見えているイメージがありました。多分映画のリズムも考えながら撮っているのでしょうね。
Q:監督のビジョンは最初にお話ししたときから感じていましたか。
東出:いえ、最初はそこまで分からなかったです。金子さんの部屋のシーンの撮影でカメラがゆっくりワークしてきたときに、この映画はスタイリッシュになるのかなと初めて気づきました。それまでは金子勇でいることしか考えられてなかったですね。
松本:あのシーンは部屋全体を見せることによって、金子さん自身を表現したかったんです。それでゆっくりしたカメラワークでやりたいと岸さんに相談していました。でもあの部屋の狭さだと普通のレールは敷けない。そうしたら岸さんが部屋に合うレールを作ってくれて、それでカメラワークが可能になった。岸さんとは脚本も一緒に書いていたので、画の共有も早かったですね。
Q:では最後の質問です。お二人が影響を受けた映画監督や映画作品を教えてください。
東出:こういう社会性をもった映画でいうなら、森達也監督の『A』(98)ですね。まだご覧になったことのない方はおすすめです。
松本:僕はアーロン・ソーキンがすごく好きなんです。脚本が本当に素晴らしいなと。なので僕は打倒アーロン・ソーキンで頑張りたいと思います。『ソーシャル・ネットワーク』も彼の脚本作ですが、あそこまでのものを作り上げられるようになりたい。それを目標に頑張っています。
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監督・脚本:松本優作
主演:東出昌大
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『Winny』
3月10日(金)全国ロードショー
配給:KDDI/ナカチカ
監督・脚本:松本優作
出演:東出昌大 三浦貴大
皆川猿時 和田正人 木竜麻生 池田大
金子大地 阿部進之介 渋川清彦 田村泰二郎
渡辺いっけい / 吉田羊 吹越満
吉岡秀隆
(C)2023 映画「Winny」製作委員会