金子勇になるには
Q:金子さん役を東出さんにオファーした経緯を教えてください。
松本:東出さんの“妖しさ”みたいなものを過去の映画からすごく感じていて、金子さんにリンクするものがある気がしたんです。ただ、世間的には東出さんは二枚目なので、それがオタク気質のあるプログラマーの人物像に合うかどうか、、そこは賭けの部分もありました。実際にお会いすると、いきなり「金子さんはこうじゃない」と脚本の話から始まって、僕らと同じくらいの熱量で東出さんが話し出したんです。東出さんはもう誰よりも金子さんを理解していて、その自信があふれていました。金子さんのお姉さんも仰っていましたが、東出さんで間違いなかったですね。
東出:僕はWinnyの事件をあまり知らなくて、最初は世間と同じようにネガティブに見ていました。その後、壇先生の本を読み、準備稿を読んでいくと、金子さんに対して「なんだこの生き物は⁉︎」と興味が湧いてきた(笑)。調べれば調べるほど、金子さんって本当に純真無垢な方だって分かるんです。
『Winny』(C)2023 映画「Winny」製作委員会
金子さんが育った生家を訪ねてお姉さんにお会いしたことがあったのですが、その近辺を車で走っているとお姉さんが言うんです。「ここが勇ちゃんが通っていた電気屋」だと。そこは家からすごく遠くて、車でも30分くらいの距離のところでした。金子少年は暑い日も寒い日も、マイコンをいじりにその電気屋にチャリで通っていたんです。その推進力のまま、大人になってもプログラムに没入していた。この純真無垢さを映画でやらないとダメだなと。金子さんを知る人はみな金子さんのことが大好きなんです。金子さんになるにはどうしたらいいか、常に考えながらやっていました。
Q:映画では、その子供の頃のエピソードをもとに、壇先生が法廷での戦略を考え出します。壇先生を演じた三浦貴大さんと金子さんとの距離感にリアリティを感じました。
東出:三浦さんとはクランクイン前に食事に行ったりして、時間を共有していました。壇先生も交えて3人で食事したこともあります。壇先生は金子さんのことを「1歳上の弟」と形容していて、自分たちの好きな戦闘機の話になると二人で激論を交わしていたそうです。それって何だか中学生のワチャワチャした関係みたいだなと(笑)。そんなことを壇先生のお話から感じ取っていたので、僕と三浦さんは自然とそういう距離感になっていきました。
松本:壇先生は「おじさん同士イチャイチャしてたら気持ち悪いでしょ」と話されていて(笑)、そのなんとも言えない関係性はうまく表現できたと思います。多分お互いにシャイな部分があるんでしょうね。