なぜ『Winny』だったのか
Q:配給第一弾作品として『Winny』を選んだ理由を教えてください。
金:Winny事件が起こった当時は衝撃を受けた記憶もあり、通信にも関わりのある話なので、我々がしっかり配給して届けるべき作品だと思いました。当初はミニシアターだけで展開する予定でしたが、全国のシネコンに展開して多くの方に観てもらうように配給を拡大しました。映画を通じて、より多くの人にWinny事件を知ってもらいたいと思ったんです。
Q:検察機構に対する批判のような描写もありますが、内容にリスクを感じたりはされませんでしたか。
金:これは映画ですから。忖度したりリスクを感じる必要はないですよね。海外の映画だと企業名や個人名も実名が出てきますが、日本だとネガティブになる印象があるものは、その名前を出さなくなった。それで「これは実話です」なんて言うのもおかしな話だなと。映画化するからにはちゃんと伝えるべきだと思います。ただ、実話の場合は実在する方々がいらっしゃるので、その辺の配慮は欠かせません。
Q:完成した映画『Winny』をご覧になって手応えを感じていますか。
金:完成した作品を観てズシンときました。テンションが上がったというか。劇場のブッキングもそうですが、宣伝においてもやれることはすべてやり切りたいと心の底から思った作品の一つですね。
『Winny』(C)2023 映画「Winny」製作委員会
Q:製作委員会としての出資から、配給まで事業拡大した理由は何だったのでしょうか。
金:良い作品が全国公開できずにミニシアターだけの上映で終わってしまうのがもったいない。そういう作品を全国に広げることに配給をやる意義を感じました。これまで製作委員会に参加してきたので、そのビジネスモデルは理解できていますが、配給事業はやったことがないので見えない部分も多かった。劇場がどういった基準で上映作品を選んでいるのか、実体験がないので実情が分からないんです。でもそれも(配給に)関わることで見えてくるものがある。この経験を通して他の可能性を模索したい。そこに新しいチャンスがあるかもしれない。そこも配給を手掛けた理由の一つですね。
Q:金さんの元には普段からいろんな企画が集まってくるのでしょうか。
金:ご提案いただく場合もありますが、自分が探した企画や出資参画に時間がかかる作品の方がうまくいく傾向があります(笑)。今回の『Winny』も最初は2年ほど前に話をしたのですが、そのときは色々な理由から実現には至らなかった。それでもその後も『Winny』のことがずっと頭の片隅に残っていたので、再度アプローチをして参画が決まりました。