公開されるや絶賛の声に溢れている映画『Winny』。実在の事件を元にしたこの物語、若き俊英・松本優作監督の骨太な演出のもと堂々たる大人のエンターテインメントに仕上がっている。東出昌大や三浦貴大を始めとする役者陣の熱演も見応え十分だ。
本作は当初ミニシアターでの単館上映が予定されていたところ、KDDIが配給を手掛けることにより全国へと上映が拡大された。これまで製作委員会として数々の映画に出資してきたKDDIだが、劇場作品の配給を手がけるのは今回が初めて。『Winny』は全国に届けるべき作品だと、上映拡大に奔走した人物がKDDIのプロデューサー金山氏だ。KDDIはなぜ今回配給事業を手がけることになったのか。また、リスクが高いと言われる映画への出資を通信会社であるKDDIが行う意義とは。金氏に伺った話からは日本映画が抱える問題や未来も見えてきた。
Index
出資を可能とさせる顧客への価値提供
Q:製作委員会に入り多くの映画に出資されてきましたが、通信会社としての意図はどこにあるのでしょうか。
金:KDDIは「auスマートパスプレミアム」というサービスを提供しています。映画に出資することによって、そのお客様を映画の試写会にご招待したり、1,100円で映画を鑑賞いただけたりと、会員のお客様に対して特典が提供できる。そしてその特典が出資作品の宣伝にもつながっていく。映画への出資はそういった良いサイクルを生み出していきます。また、特典映像の視聴によってポータルへの接触が増えると、新たなビジネスの可能性も出てくる。僕自身映画が好きなので、映画を使って課題解決をしたいという思いもあります。
『Winny』(C)2023 映画「Winny」製作委員会
Q:映画製作への出資はリスクが高いイメージがありましたが、顧客への価値提供の側面があって出資が可能となっているのですね。
金:そうですね。ただ、出資するからにはリクープを目指すの変わりません。その上でお客様への特典をどう作るか。また、映画をヒットさせることがプロデューサーとしての醍醐味でもあるので、特典が多く利用されたとしても映画が当たらなければあまり嬉しくはありません。関係者が集まって数字を見守る感覚があるのは、今は映画ぐらいではないでしょうか。公開初日に多くの人が劇場に足を運んでくれるのと同じタイミングで、多くの関係者と喜びを分かち合える。僕はそこに意義を感じますし、まんまとハマってしまっています。映画には人を魅了させる力がありますね。