© Jean Claude Lother
『パリタクシー』クリスチャン・カリオン監督 感動して初めて問題を理解することが出来る【Director’s Interview Vol.301】
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『タクシードライバー』(76)『ドライビング MISS デイジー』(89)『ナイト・オン・ザ・プラネット』(91)『タクシー運転手 約束は海を超えて』(17)『グリーンブック』(18)などなど、タクシーや運転手を題材にした傑作群に1本の映画が加わった。フランス映画『パリタクシー』は、人生の危機を迎えたタクシー運転手が、ふとしたきっかけで乗せることになった92歳のマダムとのドライブにより、二人の人生が大きく動き出す物語。手掛けたのは『戦場のアリア』(05)でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた経験を持つクリスチャン・カリオン監督。監督はこのタクシー映画をどう作り上げたのか?話を伺った。
『パリタクシー』あらすじ
パリのタクシー運転手のシャルルは、人生最大の危機を迎えていた。金なし、休みなし、免停寸前、このままでは最愛の家族にも会わせる顔がない。そんな彼のもとに偶然、あるマダムをパリの反対側まで送るという依頼が舞い込む。92歳のマダムの名はマドレーヌ。終活に向かう彼女はシャルルにお願いをする、「ねぇ、寄り道してくれない?」。人生を過ごしたパリの街には秘密がいっぱい。寄り道をする度、並外れたマドレーヌの過去が明かされていく。そして単純だったはずのドライブは、いつしか2人の人生を大きく動かす驚愕の旅へと変貌していく!
Index
フランス映画初のバーチャルプロダクション
Q:タクシーでパリを一日周っているだけなのに、まるで長い旅路のようです。タクシー内と回想シーンのバランスはどのように取られたのでしょうか。
カリオン:脚本段階では現在と過去は半々のバランスでしたが、完成した映画では過去よりも現在のシーンの方が長くなっています。シャルルとマドレーヌが一緒にいるタクシーの中は、密閉された美しい場所であることに気づいたんです。タクシーで旅をするというところも気に入っていますね。
Q:タクシーや運転手を題材にした名作はこれまでにもたくさん作られてきましたが、実際に作ってみていかがでしたか。
カリオン:確かに、タクシーの映画だけで映画祭が出来るくらいたくさんありますよね(笑)。タクシー車内の撮影は想像以上に難しいものです。以前『フェアウェル さらば、哀しみのスパイ』(09)という映画を撮った際に車内撮影を経験したのですが、そのときはスピルバーグの『激突!』(71)を参考にしました。今回の作品では車の周りにLEDパネルを置き、バーチャルプロダクションの形式で撮影しました。とてもいい経験でしたね。
『パリタクシー』© 2022 - UNE HIRONDELLE PRODUCTIONS, PATHE FILMS, ARTÉMIS PRODUCTIONS, TF1 FILMS PRODUCTION
Q:バーチャルプロダクションでの撮影だったと後から知って驚きました。全く違和感がなかったので気づかなかったです。
カリオン:それは嬉しいですね。ありがとうございます。映画撮影は嘘ばかりですから(笑)、本当だと思ってもらえるのはこの上ない喜びです。フランス映画でバーチャルプロダクションを使ったのはこの映画が初めてです。ハリウッドでは少し前から使われてきましたが、我々も予算が少ない中でうまく使いこなせたと思います。もしまた使う機会があればもっと大胆にやりたいですね。
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