© Jean Claude Lother
『パリタクシー』クリスチャン・カリオン監督 感動して初めて問題を理解することが出来る【Director’s Interview Vol.301】
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感動から生まれる理解
Q:マドレーヌの人生は多くの女性が歩んできた歴史を体現しています。世の中に存在する問題を物語として内包することをどう捉えていますか。
カリオン:映画はメッセージそのものではなく、あくまでも感動するために存在するもの。感動したときに初めて問題を理解することが出来る。例えば、ドメスティックバイオレンス(DV)について語っている映画だと声高に言っても誰も観に来てくれません。感動する物語があるからこそ、DVについての話を聞いてもらえるのです。お金を払って映画を観に行くことは、笑ったり泣いたりして何かを感じるため。感じることにより理解することも出来る。50年代のDVの状況はどうだったのか、フランスにはどんなDVの歴史があったのか、そして高齢者はどんな問題をかかえているのか。感動があるからこそ、そういった問題について話を聞くことが出来るのです。
『パリタクシー』© 2022 - UNE HIRONDELLE PRODUCTIONS, PATHE FILMS, ARTÉMIS PRODUCTIONS, TF1 FILMS PRODUCTION
Q:影響を受けた監督や映画を教えてください。
カリオン:ジョン・フォードとアルフレッド・ヒッチコック、スティーブン・スピルバーグ、そして黒澤明です。ジョン・フォードからはヒューマニズムと空間撮影に影響を受けました。そしてヒッチコックからは、映画の文法と編集、映画音楽について学びました。バーナード・ハーマンの音楽はヒッチコックの映画と切り離すことが出来ませんからね。また、黒澤明の『乱』(85)を観たときは本当に驚きました。映画や才能に国境はありません。世界中に影響を与えた監督だと思います。
そしてスピルバーグですが、私が『戦場のアリア』(05)という作品でアカデミー賞にノミネートされたとき、スピルバーグのちょうど後ろが私の席だったんです。それで「ここにいるのはあなたのおかげです。『激突!』や『ジョーズ』(75)『E.T.』(82)を観たから私はここにいるのです」と挨拶したら、スピルバーグは「『ミュンヘン』(05)は5部門もノミネートされたのに全然受賞しなかった。でも今の言葉が聞けたからそれで満足だよ」と言ってくれました。その謙虚さに心を打たれましたね。
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監督・脚本・プロデューサー:クリスチャン・カリオン
1963年1月4日生まれ。フランス北部・カンブレー出身。13歳から映画製作への情熱を持ちながら、家族の希望でフランス農務省付属の工学部に入学。しかし、その後映画への情熱が抑えられず、映画を撮り始めた。2001年に初の長編映画“The Girl from Paris”(原題)の監督を務め、240万人以上のフランス人映画ファンを魅了するヒット作となった。その後、監督・脚本を務めた『戦場のアリア』(05)が、第63回ゴールデン・グローブ賞最優秀外国語映画賞、第78回アカデミー賞®国際長編映画賞(旧外国語映画賞)、第39回セザール賞の作品賞とオリジナル脚本賞、第59回英国アカデミー賞外国語映画賞ほかにノミネートされ、その年の映画賞を席巻した。その他の代表作に『フェアウェル さらば、哀しみのスパイ』(09)、『戦場のブラックボード』(15)などがある。2017年に監督した『凍える追跡』は2021年にジェームズ・マカヴォイ主演で、自身で英語版リメイクを手掛けた。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『パリタクシー』
4月7日(金)新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国公開
配給:松竹
© 2022 - UNE HIRONDELLE PRODUCTIONS, PATHE FILMS, ARTÉMIS PRODUCTIONS, TF1 FILMS PRODUCTION
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