エンタメ不要論に対し、能楽を選択した河村Pのセンス
Q:河村さんは当初から横浜さんを主演に考えていたと伺いましたが、『あゝ、荒野』(17)の菅田将暉さんや『新聞記者』の松坂桃李さんほか、旬の俳優に社会派の作品をぶつける特徴があると藤井さんは仰っていました。その部分も含め、プロデューサーとしての手腕をどうご覧になっていますか?
藤井:やはりビジネスセンスだと思います。彼は出版業もやっていて、時代を読む力にすごく長けていました。『ヴィレッジ』に出てもらった作間龍斗くんの存在も早くから知っていたし、リサーチ力がすごく高い。河村さんが亡くなって半年ほど経ちますが、彼のことを思い出すとたくさんの人に会っていた印象があります。たくさんの人に電話をかけまくっていたし、色々なことに興味がある人でしたね。「この配役は誰がいいの? よし分かった、話しに行こう」みたいな猪突猛進さもあったし、風呂敷を広げてから考えるタイプでそういうところを僕は人間としてカッコいいなと思っていました。
みんな大体ビビっちゃって石橋をたたいて「これじゃできません、あれじゃできません」と言いがちなんだけど、河村さんは真逆の人でした。
『ヴィレッジ』©️2023「ヴィレッジ」製作委員会
Q:人材リサーチもすごいし、アイデアもオリジナリティがあるし……
藤井:コロナ禍に入りエンタメ不要論が出るなかで、日本最古の芸能である「能」に立ち戻るセンスは凄いなと思いました。
Q:「ある村を日本の縮図に例える」アイデアも河村さんが初期から持たれていたものだったのでしょうか。
藤井:河村さんはどっちかというとちゃんと村モノをやりたかったみたいなのですが、僕が底抜けにシティボーイなので無理でした(笑)。「俺、和式でトイレできないもん!」みたいなこと言って(笑)。
ただ、自分はムラ社会に対して思うこともあったし、自分が監督する前にも「『ヴィレッジ』は日本社会の縮図だと思って撮ります」と河村さんに伝えて「俺もそう思ってるよ」と言っていた気がします。